相続開始から10年経過後は特別受益と寄与分はありません 相続法の改正 ~ 贈与や相続・譲渡など資産税[142]
相続法の改正に関する記事です。
今回は
改正後は、相続開始から10年経過した後にする遺産分割に、原則として特別受益および寄与分の規定は適用されません
を紹介します。
改正前までは、相続開始から長期間経過した場合でも、特別受益や寄与分の規定の適用が制限されることはありませんでした。
<参考>
→ 「特別受益の持ち戻し」は公平な相続を行うための気が利いた制度ですが、もめる原因ともなります
→ 遺産を分ける中で難しい「介護や世話の評価」。もめる原因に一番なりやすい
改正後は
相続開始(被相続人の死亡)時から10年を経過した後にする遺産分割は、具体的相続分ではなく、法定相続分(または指定相続分)によります。
つまり、相続開始から10年の期間経過した後は、相続人は、各相続人の法定相続分(指定相続分がある場合は、指定相続分)を前提に遺産分割を行うことになります。
ただし、引き続き具体的相続分により分割する場合の例外があります。次のとおり
① 10年経過前に、相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をしたとき
② 10年の期間満了前6か月以内に、遺産分割請求をすることができないやむを得ない事由※が相続人にあった場合に、その事由消滅時から6か月経過前に、相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をしたとき
※ 被相続人が遭難して死亡していたが、その事実が確認できず、遺産分割請求をすることができなかったなど
相続開始から10年経過後については
10年経過により分割基準は法定相続分等となります。
分割方法は基本的に遺産分割です。共有物分割ではありません。
遺産分割の特徴は次のとおりです
・ 裁判手続は家庭裁判所の管轄です。
・ 遺産全体の一括分割が可能です。
・ 遺産の種類・性質、各相続人の状況等の一切の事情を考慮して分配します。
・ 配偶者居住権の設定も可能です。
一方、具体的相続分による遺産分割の合意は可能です
10年が経過し、法定相続分等による分割を求めることができるにもかかわらず、相続人全員が具体的相続分による遺産分割をすることに合意したケースでは、具体的相続分による遺産分割ができます。
改正の適用関係は次のとおりです
① 新ルールは令和5年4月1日から。
② 改正法の施行日前に被相続人が死亡した場合の遺産分割についても適用されます。
ⅰ 施行日前に発生した相続に新ルールを適用する場合でも、少なくとも施行時から5年の猶予期間が与えられることになっています。
ⅱ 施行前に発生した相続でも、その相続開始から10年後の日が猶予期間の5年の最終日より後になる場合は、相続開始から10年後の日が終期となります。つまり、遅い方です。
(出所:法務省民事局HP、「民法・不動産登記法改正の要点と実務への影響」弁護士:荒井達也)
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