所有者不明土地の発生予防や土地利用の円滑化ための民法の見直し。不動産登記法の改正~ 贈与や相続・譲渡など資産税[128]
資産税に関する記事です。
今回は
所有者不明土地の発生予防と利用の円滑化を図るための民法の見直し(令和5年4月1日施行)
を紹介します。
相続登記がされないことによる所有者不明土地が発生しています
所有者不明土地の割合は22% で、これは九州ほどの面積に匹敵します。
所有者不明土地とは、 次の土地のことをいいます。
① 不動産登記簿により所有者がただちに判明しない土地
② 所有者が判明してもその所在が不明で連絡がつかない土地
所有者不明土地が増加している理由は次のとおりです
① 相続登記の申請は義務ではありません。申請しなくても不利益を被ることはないから。
② 人口減少・高齢化の進展により、地方で土地の所有意識が希薄化、土地を利用したいというニーズが低下しています。(つまり土地の負動産化)
③ 遺産分割をしないまま相続が繰り返されると、土地の共有者がねずみ算式に増加します。
こうしたことを受けて
所有者不明土地の利用の円滑化を図るため民法の改正があります。次の4つです
① 財産管理制度の見直し
② 共有制度の見直し
③ 相続制度の見直し
④ 相隣関係ルールの見直し
「① 財産管理制度の見直し」とは
現行の不在者財産管理人・相続財産管理人は、人単位で財産全般を管理する必要があり、非効率です。次の2つの制度を創設します。
■ 所有者不明土地・建物の管理制度の創設
個々の所有者不明土地・建物の管理に特化した新たな財産管理制度を創設します。たとえば、裁判所が管理命令を発令し、管理人を選任(裁判所の許可があれば売却も可)します。
■ 管理不全土地・建物の管理制度の創設
所有者が土地・建物を管理せずこれを放置していることで他人の権利が侵害されるおそれがある場合に、管理人の選任を可能にする制度を創設します。
「② 共有制度の見直し」とは
■ 裁判所の関与の下で、不明共有者に対して公告をした上で、残りの共有者の同意で、共有物の変更行為や管理行為を可能にする制度を創設します。
■ 裁判所の関与の下で、不明共有者の持分の価額に相当する額の金銭の供託により、不明共有者の共有持分を取得して不動産の共有関係を解消する仕組みを創設します。
こうした制度により、不明共有者がいても、共有物の利用・処分を円滑に進めることが可能になります。
「③ 相続制度の見直し」とは
具体的には、遺産分割長期未了状態の解消を促進するため、
相続開始から10年を経過したときは、個別案件ごとに異なる具体的相続分による分割の利益を消滅させます。画一的な法定相続分で簡明に遺産分割を行う仕組みを創設します。
「④ 相隣関係ルールの見直し」とは
ライフラインの引込みを円滑化し土地利用を促進するため、ライフラインの設備設置権のルールを整備します。
つまり、ライフラインを自己の土地に引き込むための導管などの設備を他人の土地に設置する権利を明確化し、隣地所有者不明状態にも対応できるルールを整備します。
(出所;法務省民事局HP)
「変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する。」
(ピーター F.ドラッカー)
夏の1日を元気にお過ごしください。
[編集後記]
トップの画像は、昨日「東京日本橋」の夜景です。
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