遺言書の法定記載事項のうち5つの事項。遺言により保険金受取人の変更などができます ~ 贈与や相続・譲渡など資産税[38]
今回は
遺言により保険金受取人の変更などができます。法定記載事項のうち5つの事項について
を紹介します。
遺留分の定めに反しない範囲で、遺言によって「誰が、何を、どれだけ相続するか?」を明確に定めておくことで、相続の問題は解決することが多いと思います。
こうしたことを踏まえて、遺言書の記載事項をご紹介します。
そもそも、遺言書の記載事項にはどのようなものがあるのかを考えてみます。
「遺言事項の法的効力」について
遺言書に記載することにより、具体的な法律上の効果が生じる事柄は何かです。
遺言によって法的な効力を与えられる事項は、おおまかには次の3つです。
■ 相続に関する事項(相続分の指定など)
■ 財産の処分に関する事項(遺贈など)
■ 身分に関する事項(遺言による認知・排除など)
遺言の法定記載事項としては18項目があります。
このうち①~⑬(13項目)はすでに取り上げました。今回は残りの5項目(⑭~⑱)を紹介します。
⑭ 共同相続人間相互における担保責任の指定
遺産分割の結果、取得した財産に瑕疵があった場合や取得した債権について全額の弁済を受けることができなかった場合など、相続人間で不公平が生じたときは、相続人間の担保責任を規定しています。遺言によりこれらの規定が適用されないように別段の意思を表示することができます。
<参考>
民法914条
(遺言による担保責任の定め)
「前三条の規定は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、適用しない。」
⑮ 遺言者執行者の指定または第三者に対する指定の委託
遺言の執行には、常に遺言執行者の選任が必要となるわけではありません。
しかし、子の認知、推定相続人の廃除とその取消しについては、遺言執行者を置くことになっています。このような遺言執行者の選任は遺言自体によって選任することになっています。
<参考>
民法1006条
(遺言執行者の指定)
「遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。
2 遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。
3 遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。」
⑯ 遺言執行に関する別段の意思表示
遺言執行者の復任権や任務執行、報酬を遺言により定めることができます。
<参考>
民法1016条
(遺言執行者の復任権)
「遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
2 前項本文の場合において、第三者に任務を行わせることについてやむを得ない事由があるときは、遺言執行者は、相続人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。」
民法1017条
(遺言執行者が数人ある場合の任務の執行)
「遺言執行者が数人ある場合には、その任務の執行は、過半数で決する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
2 各遺言執行者は、前項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。」
民法10189条
(遺言執行者の報酬)
「家庭裁判所は、相続財産の状況その他の事情によって遺言執行者の報酬を定めることができる。ただし、遺言者がその遺言に報酬を定めたときは、この限りでない。
2 第六百四十八条第二項及び第三項並びに第六百四十八条の二の規定は、遺言執行者が報酬を受けるべき場合について準用する。」
⑰ 遺言の撤回はいつでもできます
遺言は、遺言者の死亡時に効力が生じます。それまでの間、遺言者はいつでもそれを撤回できます。撤回の方法は、いくつかの方法があります。
<参考>
民法1022条
(遺言の撤回)
「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。」
⑱ 遺言により保険金受取人の変更ができます
<参考>
【生命保険に関して】
保険法44条
(遺言による保険金受取人の変更)
「保険金受取人の変更は、遺言によっても、することができる。
2 遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じた後、保険契約者の相続人がその旨を保険者に通知しなければ、これをもって保険者に対抗することができない。」
【障害疾病定額保険について】
保険法73条
(遺言による保険金受取人の変更)
「保険金受取人の変更は、遺言によっても、することができる。
2 遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じた後、保険契約者の相続人がその旨を保険者に通知しなければ、これをもって保険者に対抗することができない。」
遺言の法定記載事項18項目うち、前回以前に取り上げた13項目は次のとおりです。
① 共同相続人に対して相続分の指定ができます
② 誰に何を与えるかなど遺産分割方法の指定できます
③ 5年を限度とする遺産分割の禁止ができます
④ 他人に財産を与えることができます。包括遺贈・特定遺贈といいます
⑤ 遺言によって一般財団法人の設立することができます
⑥ 遺言によって信託の設定ができます
→ 遺言書を作成する際に、記載事項はどのようなものがありますか?
⑦ 遺言により推定相続人の廃除をすることができます
⑧ 推定相続人の廃除の取り消しをすることができます
⑨ 嫡出でない子どもの認知をすることができます
⑩ 未成年後見人の指定がすることができます
⑪ 未成年後見監督人を指定することができます
⑫ 特別受益者に対する特別受益(生前贈与・遺贈)に対する持戻しを免除する旨の意思表示をすることができます
→ 遺言により推定相続人などの認知・排除をすることができます(遺言書の法定記載事項)
⑬遺言で記載すべき「遺贈に関する別段の意思表示」
→ 遺言書の法定記載事項のうち、遺贈に関して別段の意思表示ができる7つのケース
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