遺産を相続した相続人が認定NPO法人に遺産を寄付した場合の課税の取り扱い~ 遺贈寄付[22]
今回は
遺産を相続した相続人が認定NPO法人に遺産を寄付した場合の課税の取り扱い
を紹介します。
相続人が相続した財産を認定NPO法人に寄付する場合、次のように譲渡所得の基因となる資産かどうかで課税関係が変わります。
① 現金・預金の寄付(譲渡所得の基因とならない資産)
② 土地・建物・株式などの寄付(譲渡所得の基因となる資産)
①と②とも共通して、租税特別措置法第70条の適用を受ければ、認定NPO法人に寄付した場合は、寄付した財産は相続税の対象にはなりません。
①現金・預金の遺贈(譲渡所得の基因とならない資産)をした場合
ⅰ 寄付財産は租税特別措置法第70条の適用を受けることにより相続税の対象になりません(ただし相続税法66条第4項に注意します。)
ⅱ 寄付した相続人が2,000円を超える特定寄附金を支出した場合は、寄附金控除の対象となります。(所得税法第78条)
ⅲ 認定NPO法人には贈与税は課税されません。ただし、相続税法66条第4項が適用される場合には贈与税が課税されます。
次のようなイメージです。
②土地・建物・株式などの遺贈(譲渡所得の基因となる資産)をした場合
措置法第40条の適用の有無で2つのパターンに区分します。
A:措置法第40条の適用を受けないとき
次のようなイメージです。
ⅰ 寄付財産は租税特別措置法第70条の適用を受けることにより相続税の対象になりません(ただし相続税法66条第4項に注意します。)
ⅱ 租税特別措置法第40条の適用を受けていませんので、所得税法第59条により、相続人は譲渡所得税が課税されます。
ⅲ 寄付した相続人が2,000円を超える特定寄附金を支出した場合は、寄附金控除の対象となります。(所得税法第78条)この場合、寄付金額は時価です。
ⅳ 認定NPO法人には贈与税は課税されません。ただし、相続税法66条第4項が適用される場合には贈与税が課税されます。
B:措置法第40条の適用を受けるとき
次のようなイメージです。
ⅰ 寄付財産は租税特別措置法第70条の適用を受けることにより相続税の対象になりません(ただし相続税法66条第4項に注意します。)
ⅱ 租税特別措置法第40条の適用を受けます。相続人は譲渡所得税が課税されません。
ⅲ 寄付した相続人が2,000円を超える特定寄附金を支出した場合は、寄附金控除の対象となります。(所得税法第78条)この場合、寄付金額は土地等の取得費で計算します。
ⅳ 認定NPO法人には贈与税は課税されません。ただし、相続税法66条第4項が適用される場合には贈与税が課税されます。
<参考>
租税特別措置法第70条とは
相続財産を公益法人などに寄附したとき特例
相続や遺贈によって取得した財産を国、地方公共団体、公益を目的とする事業を行う特定の法人または認定非営利活動法人(認定NPO法人)に寄附した場合や特定の公益信託の信託財産とするために支出した場合は、その寄附をした財産や支出した金銭は相続税の対象としない特例です。
所得税法第78条とは
一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)
個人が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し、「特定寄附金」を支出した場合には、所得控除を受けることができます。これを寄附金控除といいます。
措置法第40条とは
国等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税
個人が、土地、建物、株式などの財産を法人に寄附した場合には、これらの財産は寄附時の時価により譲渡があったものとみなされ、これらの財産の取得時から寄附時までの値上がり益に対して所得税が課税されます。
これは、個人から法人に土地、建物などの財産が無償で移転するときに、個人に帰属する値上がり益に対する所得税を精算するための制度的要請によるものです。
第66条 人格のない社団または財団等に対する課税
第4項
「持分の定めのない法人に対し財産の贈与または遺贈があつた場合において、贈与または遺贈により贈与または遺贈をした者の親族その他これらの者と特別の関係がある者の相続税または贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるときは、贈与税または相続税を課する。」
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