遺言ですべての遺産を友人に遺贈した場合(死亡退職金は遺留分を算定するための基礎となる財産の価額にはいるのか?) ~ 遺贈寄付[19]
日曜日は、遺贈寄付についての記事を紹介しています。
今回は
遺言ですべての遺産を友人に遺贈した場合(死亡退職金は遺留分を算定するための基礎となる財産の価額にはいるのか?)
を紹介します。
わかりやすくするため具体的な事例で検討します
・被相続人:国家公務員独身者A(男性62歳)、配偶者、子供なし。難病のため入院中。
・30年前から親族とは付き合いはなし。法定相続人は5人(母親、兄弟4人)
・遺言によりすべての財産を、世話になった友人Bに遺贈する予定です。
・遺産合計5,000万円 内訳は次のとおりです。
① 生命保険金2,400万円(受取人:友人B、契約者・負担者はA)
② 死亡退職金2,000万円
③ 土地・家屋・預金600万円
相続税の申告の有無については
基礎控除3,000万円+600万円×5人=6,000万円
遺産:5,000万円 < 基礎控除:6,000万円
したがって、相続税の申告・納税はありません。
ただし遺留分についてのチェックが必要になります
■ 母親についての遺留分:1/3
■ 遺留分を算定するための基礎となる財産額を検討しますと
生命保険金2,400万円は遺留分の対象とはなりません。
<参考> 平成16年10月29日最高裁決定
「被相続人を保険契約者及び被保険者とし、共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人とする養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権は、民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないが、保険金の額、この額の遺産の総額に対する比率、保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、特別受益に準じて持戻しの対象となる。」
遺言による死亡退職金2,000万円が遺留分の対象になるかどうか?です
次のように考えています。
法令の規定に基づく死亡退職金は、受給者が原始的に取得する固有の権利であって、相続財産ないし相続人の共有財産に属しないとするのが通説だといわれています。
したがって、遺言による死亡退職金が友人Aに支給されれば遺留分の対象になりません。
しかし、国家公務員退職手当法は受給者を次のように定めています。
<参考>
一 配偶者(届出をしないが、職員の死亡当時事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。)
二 子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で職員の死亡当時主としてその収入によつて生計を維持していたもの
三 前号に掲げる者のほか、職員の死亡当時主としてその収入によつて生計を維持していた親族
四 子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で第2号に該当しないもの
つまり、配偶者や親族を対象に受給者を定めているわけです。
したがって、遺言による友人Aへの死亡退職金の支給が可能になるよう、退職金支給担当課に事情などを説明し、事前に申立書などを作成し、支給に関する合意を得ておくことが最善だと考えます。
そうすれば、死亡保険金と同じ取扱になり遺留分の対象にはならないと考えています。
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