母親の配偶者居住権の消滅後に所有者の息子が建物・土地を譲渡した場合 ~ 贈与や相続・譲渡など資産税[30]
配偶者居住権の記事を掲載します。
今回は
母親の配偶者居住権の消滅後に、所有者の息子が建物・土地を譲渡した場合
を紹介します。
(画像は舞鶴市の煉瓦倉庫です。)
今回お伝えするのは少し複雑なパターンです。
対価を払って配偶者居住権を消滅させた後、所有者の息子が建物・土地を譲渡した場合について検討します。
時系列にいうと次のような経過です。
(1)夫が死亡し、遺贈により妻Aに終身の配偶者居住権が設定された後、子どもBが自宅の土地・建物の所有権を取得しました。(取得日:2021年3月20日)
(2)その5年後に、子どもBがA(母親)に対価を払って配偶者居住権を消滅させました。(消滅日:2026年3月20日)
(3)その後に子どもBが建物・土地を譲渡した場合(譲渡日:2026年9月25日)
(1)配偶者居住権設定に関する資料
■建物・土地所有者:被相続人(夫)
■夫死亡日:2021年3月20日
■建物相続税評価額:2,000万円
■土地相続税評価額:5,000万円
■被相続人の土地・建物の取得日:2010年12月1日
■被相続人の建物の建築費3,000万円
■被相続人の土地の取得費5,000万円
■配偶者の年齢:80歳10月(夫死亡日時点)
■建物・土地の相続人:長男
■建物構造:木造(法定耐用年数:22年)
(2)配偶者居住権を消滅日に関する資料
■配偶者居住権放棄日:2026年3月20日(対価の支払い有り)
■配偶者居住権の対価:842万円
■土地の利用権( 配偶者居住権に基づく敷地利用権の価額)の対価:1.055万円
■配偶者居住権消滅時の建物相続税評価額:1,500万円
■配偶者居住権消滅時の土地相続税評価額:5,000万円
(3)配偶者居住権の消滅後の所有者の譲渡に関する資料
■建物・土地の売却価格:8,000万円
■譲渡日:2026年9月25日
建物の(2)の配偶者居住権消滅時の取得費の計算
① 消滅時の建物の取得費
配偶者居住権の設定時の被相続人から引き継いだ建物取得費
3,000万円-3,000万円×0.9×0.031※×15年※※=1,745万円
※ 耐用年数 22年×1.5=33年の定額法の償却率
※※ 2010/12/01~2026/03/20:15年3月→15年
② 消滅時の配偶者居住権の取得費
1,745万円×1,329万円※/2,000万円※※×(1-5/12※※※)=676万円
※ 配偶者居住権の設定時の価額:1,329万円
※※ 相続開始時の建物相続税評価額:2,000万円
※※※ ア/イ
ア:配偶者居住権の設定時から消滅時までの期間
2021/03/20~2026/03/20:5年
イ:配偶者居住権の存続期間
12年
③ 建物の所有権部分の取得費(配偶者居住権の取得時)
① – ② = 1,069万円
④消滅の対価
842万円
⑤取得費の合計
ⅰ ③+④=1,911万円
ⅱ 1,911万円×(1-0.9×0.031×1年)=1,858万円
土地の(2)の配偶者居住権消滅時の取得費の計算
①消滅時の土地の取得費
5,000万円
②消滅時の配偶者居住権の敷地利用権取得費
5,000万円×1,055万円/5,000万円×(1-5/12)=615万円
③土地の価額
①-②=4,385万円
④消滅の対価
1.055万円
⑤取得費の合計
長期譲渡所得になります
③+④=5,440万円
8,000万円-(1,858万円+5,440万円)=702万円
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