期間途中で合意解除により配偶者居住権を売却した場合 ~ 贈与や相続・譲渡など資産税[27]
配偶者居住権の記事を紹介します。
今回は
期間途中で合意解除により配偶者居住権を売却した場合、つまり対価の授受があったとき
を紹介します。
たとえば
夫が死亡し遺贈により妻が配偶者居住権を取得し、息子が土地・建物の所有権を取得しました。
その後
配偶者居住権の存続期間の途中に、合意解除等により配偶者居住権が消滅した場合は、みなし贈与により贈与税が課税されます。
それを避けるため、建物と土地の所有者(子ども)は配偶者に対価を支払うことが考えられます。
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→ 「配偶者居住権の消滅」がみなし贈与にあたる場合とみなし贈与にあたらない場合
その場合の譲渡所得の計算を考えます
前提
■建物・土地所有者:被相続人(夫)
■夫死亡日:2021年3月20日
■建物相続税評価額:2,000万円
■土地相続税評価額:5,000万円
■被相続人の土地・建物の取得日:2010年12月1日
■被相続人の建物の建築費3,000万円
■被相続人の土地の取得費5,000万円
■配偶者の年齢:80歳10月(夫死亡日時点)
■建物・土地の相続人:長男
■建物構造:木造(法定耐用年数:22年)
■配偶者居住権放棄日:2026年3月20日(対価の支払い有り)
■配偶者居住権の対価:842万円
■土地の利用権( 配偶者居住権に基づく敷地利用権の価額)の対価:1.055万円
■配偶者居住権消滅時の建物相続税評価額:1,500万円
■配偶者居住権消滅時の土地相続税評価額:5,000万円
〔配偶者居住権の価額〕の譲渡所得の計算
1 収入金額 842万円+1,055万円=1,897万円
2 配偶者居住権の取得費
配偶者居住権の設定時の被相続人から引き継いだ建物取得費
ⅰ 3,000万円-3,000万円×0.9×0.031※×15年※※=1,745万円
※耐用年数 22年×1.5=33年の定額法の償却率
※※2010/12/01~2026/03/20:15年3ケ月
ⅱ 1,745万円×1,329万円※/2,000万円※※×(1-5/12※※※)=676万円
※ 配偶者居住権の設定時の価額:1,329万円
※※ 相続開始時の建物相続税評価額:2,000万円
※※※ ア/イ
ア:配偶者居住権の設定時から消滅時までの期間
2021/03/20~2026/03/20:5年
イ:配偶者居住権の存続期間
12年
3 配偶者居住権に基づく敷地利用権の取得費
5,000万円×1,055万円/5,000万円×(1-5/12)=615万円
4 長期短期の判定
配偶者居住権・敷地利用権
2010/12/01~2026/03/20 長期譲渡に該当
5 譲渡所得の計算(総合長期譲渡所得)
1,897万円-(676万円+615万円)-50万円=556万円
556万円×1/2=278万円
譲渡所得算出する際の考え方の留意点は
・配偶者居住権および土地の利用権( 配偶者居住権に基づく敷地利用権の価額)の対価は総合譲渡所得になります。
・土地の利用権( 配偶者居住権に基づく敷地利用権の価額)の取得費の計算の際には
配偶者居住権と同様に,減価の額を控除します。
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