相続人である配偶者が若い場合に、配偶者居住権を設定する際に注意したいこと。建物の時価が配偶者居住権の価額になります ~ 贈与や相続・譲渡など資産税[17]
資産税の記事を紹介します。
今回は
相続人である配偶者が若い場合に、配偶者居住権を設定する際に注意したいこと
を紹介します。
配偶者居住権とは(ざっくりと)
配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として,終身または一定期間,配偶者に建物の使用を認めることを内容とする法定の権利です。
遺産分割や被相続人の遺言により、配偶者に「配偶者居住権」を取得させることができます。
配偶者居住権に関係する評価区分は4つあります
配偶者居住権が設定された家屋と土地の評価区分は次のようなイメージになります。
A~Bは次のような区分になります。
A 建物の利用権 → 配偶者居住権の価額
B 建物の所有権
C 土地の利用権 → 配偶者居住権に基づく敷地利用権の価額
D 土地の所有権
AとCは配偶者の財産、BとDは所有者の財産として評価することになります。
配偶者居住権を評価する場合に
相続人である配偶者が若い場合に、分数部分がマイナスになるときがあります。こうしたケースでは「B建物の所有権」がゼロになります。
つまり、「A建物の利用権(配偶者居住権の価額)」 = 建物の時価 になるケースです。
たとえば、次のような場合です
■相続税評価額 建物:1,000万円 土地:2,000万円
■建物建築日:2010年12月1日
■建物構造:木造
■建物所有者:被相続人(夫)
■遺産分割日:2021年3月20日(相続開始日)
■配偶者の生年月日:1970年11月2日
相続開始時の年齢50歳4月18日(6月未満切り捨て)→ ∴50歳
■建物相続人:長男
〔配偶者居住権の価額〕
1,000万円-1,000万円×(33年-10年-38年)/(33年-10年)×0.325=1,000万円
耐用年数:33年(22年木造建築の耐用年数×1.5)※
経過年数:10年(2010年12月1日~2021年3月20日)
存続年数:38年(第22回生命表に基づく平均余命38年)
複利現価率:法定利率3%による38年の複利現価率は0.325
※耐用年数は減価償却資産の耐用年数等に関する省令に定める住宅用の耐用年数を1.5倍したものを用います。
このケースでは、配偶者居住権の価額を算定する算式のうち、分数式部分の分子がマイナスになります。このような場合はゼロと読み替えます。
したがって、この例では、配偶者居住権の価額は1,000万円となり、建物の時価に一致することなります。
一方、長男の建物の所有権の価額はゼロになります。
変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する(ピーター F.ドラッカー)
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夏の1日を元気にお過ごしください。
贈与や相続・譲渡など資産税
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