「消費税の計算方法は原則課税と簡易課税の2つ、どちらを選択するかは慎重にしましょう」~開業前に知っておきたい経理と消費税の基礎知識⑥
開業のための基礎知識を、次の順序で説明しています。
1 個人事業を始める場合の各種届出と確定申告
2 事業の具体的な準備(資金調達・借入や助成金の活用など)
3 事業計画の作成
その中で、開業前に知っておきたい経理と消費税の知識を次のとおり紹介しています。
① 個人事業用の普通預金通帳で資金管理をする。
② 経理の必要性~将来の経営計画を立てるための重要な資料になります。
③ 経理の記帳方法~会計ソフト利用の検討をおすすめします。
④ 記帳から確定申告までの準備をざっくりとイメージしてください。
⑤ 「確定申告書を作成して税額を計算する」と場合によっては税理士への依頼も考える。
⑥ 消費税の課税事業者と免税事業者(1/15)
⑦ 原則課税と簡易課税
⑧ 帳簿・証拠書類は整理して保存する。
今日は
「原則課税と簡易課税~消費税の計算方法は2つあります。どちらを選択するかは慎重にしましょう」
です。
消費税の原則課税とは
1年間に預かった消費税(課税売上に係る消費税)から1年間に負担した消費税(課税仕入に係る消費税)を差し引いた差額を申告・納税する方法です。
消費税の簡易課税とは
簡易課税は、実際の課税仕入れ等の税額を計算することなく、売上と一定の率(みなし仕入率)を使って簡単に納税額を計算し、申告・納税する方法です。
みなし仕入率は次のとおり
第一種事業(卸売業) 90%
第二種事業(小売業) 80%
第三種事業(製造業等) 70%
第四種事業(その他の事業) 60%
第五種事業(サービス業等) 50%
第六種事業(不動産業) 40%
次のようなことを検討して原則課税と簡易課税の選択は慎重にします
① 簡易課税制度の適用を受けるには次の要件があります
ⅰ 基準期間(2年前)の課税売上高が5,000万円以下であること
ⅱ 前年末までに簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を事前に提出していること(簡易課税の届出をしない限り、原則課税が適用されます)
② 簡易課税制度を選択すると2年間は原則課税の方法に戻ることはできません。設備投資等の計画がある場合に、簡易課税制度を選択していると還付を受けることできません。
③ みなし仕入率 < 実際の仕入率の場合は、原則課税が有利になります。
簡易課税は消費税の計算が簡単ですが、取引に対する実際の判断・適用は“簡易”ではありません。
例えば、ベーカリーの場合であれば、次の販売は各々適用される事業区分が違います(各々違ったみなし仕入率を適用します)。
ⅰ パンの生地を仕入れ、焼いて店頭でお客さま(消費者)に販売
ⅱ 仕入れたパック飲料を店頭でお客さま(消費者)に販売
ⅲ 店舗内に飲食スペースを設けて店内飲食用として製造したパンを販売
簡易課税だからという理由でだけで選択することは、おすすめしません。慎重に選択することをおすすめします。
「お金の動きを通して会社の状態を把握し、経営をコントロールする」には、経理をしっかりと処理して、会計数字をもとに意思決定することが大切です。そのための道具が「経理」です。
開業の手続きや税金で気になる点があれば、お気軽にご相談ください。
Every day is a new day!
みなさん、今日も春の1日を元気にお過ごしください。
月曜日は「開業のための基礎知識」~初めて開業する方に、開業の方法や必要書類の準備を税理士からお伝えしています。
事業開始前に知っておきたい経理と消費税の基礎知識
・①「普通預金通帳で資金管理をする!」はこちら(2/19)
・②「経理の必要性!経理は将来性を計る指標です」はこちら(2/26)
・③「経理の記帳~会計ソフト利用の検討をおすすめします!」はこちら(3/5)
・④「記帳から確定申告までの準備をざっくりとイメージしてください」はこちら(3/12)
・⑤「確定申告書を作成する、場合によっては税理士への依頼を考える」はこちら(3/19)
事業を始める場合の届出と手続き
・「開業の方法や必要書類の準備を税理士からお伝えします」はこちら(10/30)
・「社会保険の変更の手続きが必要になります」はこちら(11/6)
・「給与所得の源泉徴収票の保管を忘れずに」はこちら(11/13)
・「退職後の住民税の支払いを忘れずに」はこちら(11/20)
・「事業主としてリスクに備える“小規模企業共済”がおすすめです」はこちら(11/27)
・「商売の看板『屋号(社名)』をつける」はこちら(12/4)
・「事業の各種届出から確定申告まで」はこちら(12/11)
・「青色申告はどうすればよい?届出は税務署からスタートします」はこちら(12/18)
・「青色事業専従者給与に関する届出書を忘れずに提出しましょう」はこちら(12/25)
・「給与支払事務所等の開設届出書を忘れずに提出しましょう」はこちら(01/01)
・「『減価償却資産の償却方法の届出書』を提出することができます」はこちら(1/8)
・「消費税!個人事業者は、事業開始年は免税事業者になります」はこちら(1/15)
・「手続きをすれば、事業の開始年に消費税の還付を受けることができます」はこちら(1/22)
・「労働基準監督署への届出~労働基準監督署で労災手続きをします」はこちら(1/29)
・「ハローワークへの届出」はこちら(2/5)
・「日本年金機構への届出~個人事業でも基準を満たせば加入します」はこちら(2/12)
ブログは曜日により、次のようにテーマを決めて書いています。
・月曜日は「開業の基礎知識~初めて開業する方に、税理士からお伝えします」
・火・木曜日は「介護事業の基礎知識バージョンアップ゚編」
・水曜日は「事業承継・税理士の視点」
・金曜日は「相続税ついてわかりやすく!」
・土曜日は「経営者目線で考える中小企業の決算書の読み方・活かし方」
・日曜日は「贈与税で誤りやすい事例」