井上寧(やすし)税理士事務所井上寧(やすし)税理士事務所

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2017.08.10.Thu | 介護事業

医師の佐々木淳氏「自立支援できないことが自己責任だと言ってしまうと、私たち全員必ず不幸になっていくと思う。」(その4) 【介護事業の基礎知識バージョンアップ編】

NHKの「クローズアップ現代プラス」で大東市が紹介され、その取り組みを8月5日から連続して記事にしています。今回はその最後の記事です。

(上図は平成28年大東市の「高齢者のための暮らしの情報から」)

番組では、介護給付費が約3倍になり、今後支払う介護保険料は約3倍になると予測されている中で、介護保険の財政のひっ迫を背景に、介護保険の大改革が始まったと紹介しています。

 

番組後半、改革により介護事業所の経営が苦境になっている事例が紹介されています。

 

「住民が参加することによって、介護の専門職は要介護度の重い人向けのサービスに比重を移す事ができるはずでした。しかし、九州のこの自治体では住民参加が進んでおらず、専門職が要支援1・2向けのサービスを続けざるをえない状況なのです。」

 

「しかも、要支援1・2向けのサービスの報酬が下げられているのです。この女性が働く訪問介護事業所も、自治体から受け取る報酬が25%ダウンしたといいます。この事業所は、要支援1・2向けについては利用時間を短縮したり、早朝・夜間のサービスを休止したりするなどして対応しているものの、経営は苦しいといいます。」

 

「要支援1・2向けのサービスの報酬引き下げは、全国的に多くの地域で広がっています。この訪問介護事業所ではサービスを続けていますが、ある大手介護事業所は報酬の下げ幅が大きい地域では要支援1・2向けサービスを続けるのは難しいと述べているのです。」

(上記はNHKの番組のHPから引用しています。)

 

なぜ要支援1・2の方向けのサービスに対して事業所に支払われる報酬が引き下げられているのですか?

 

ゲストの 岩名礼介氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング 上席主任研究員)は次のとおり

「今回は生活支援、要支援の方に対する生活支援については若干規制が緩和されて、介護の特別な資格がなくても従事していただくことができるようになっているのですね。資格がない方とある方、ちょっとやっぱり報酬は差をつけるというのが出てくる。」

 

「これは自治体で決めることができるのですけれども、少し安く設定されること自体が問題ではなくて、実はそういう資格のない方がなかなか参加していただくまで少し時間がかかります。そういう方が参入される前に単価だけが設定され、そうすると、お客様は目の前にいらっしゃるわけですから、どうしても専門職の方がその安い単価で従事すると。こういうことが起こってしまっているのですね。」

 

事業所が耐えかねて手を引くということにもなりかねず、住民の参加も進まないということになってくると、支援の担い手そのものがいなくなってしまうのではないのですか?

 

同氏は、次のとおり

「今回もともと人口が減ってきている、担い手がちょっと足りないという中で、より多くの方に地域を支える力になっていただくということが主たる目的で始まった事業なのですね。ですから今みたいな話になって処遇が悪化する、入ってくる報酬が下がってしまうということでは本末転倒になってしまうと思うのですね。」

 

このようなことは一部の地域だけだとは思いますが、私は、ボランティアをはじめとして住民力を活用して担い手をつくることは、かなり熟慮を要した仕掛け(例えば、大東市の生活サポーターの時間貯金など)が必要だと思います。

 

「実は厚生労働省もこの点についてはやはり地域の事業者さんとよく話し合って決めるようにと、自治体だけの都合で決めてはいけませんよということは制度が始まった時からずっと言っているのですが、安く設定してしまうところが出ているということなのですね。」

 

保険者である地方自治体は、地域がもしこのような状態になっているのであれば、どういう手を打って、この課題を克服していくのか?マネジメント力が必要とされていると思います。

 

要支援の方々が自立できるように住民の力も加えて支えようというこの理念をうまく実現するためには、どんな仕組みが求められていますか?

 

同氏は、次のとおり

「全国統一の介護保険というのが17年ずっと続いてきたわけですが、ここに来て自治体単位で地域ごとに実情に合ったものを作ろうということになってきた。これは実は自治体の職員の方には結構大きなチャレンジになっているというか、新しいチャレンジになっているのですね。」

 

「当然、自治体だけで考えていても駄目で、住民や事業所の皆さんと一緒に話し合いながら決めていくということが本当に重要になってきていると思います。これは逆に言うと、住民の皆様方から見れば自分の町に合ったものを自分たちで考えていける絶好のチャンスだというふうに前向きに捉えることも大変重要だと思っています。」

 

医師の佐々木淳氏は次のとおり

「やはり忘れてはいけないのは、私たち人間は必ずいつか例外なく衰弱して、そして例外なく死んでいくということだと思います。」

 

「自立支援をどんなに頑張っても必ずいつかはやっぱり弱っていくと。だから自立支援できないことが自己責任だと言ってしまうと、私たち全員必ず不幸になっていくと思うのですね。元気でいることはとても大事なことだと思いますけれども、やはり元気でなくても幸せに暮らせる、そういう社会を作っていかなければいけないと思います。弱って死んでいくということが私たち自身にとって例外なく私たち全員の未来ですから、一人一人が当事者意識を持って地域作りに取り組んでいくことが大事だと思います。」

(長文の引用になりました。上記はNHKの番組のHPから引用。)

 

今回で、大東市の逢坂伸子氏の取り組みやNHKのクローズアップ現代プラスの紹介記事は終了します。

 

火・木・土曜日は、最近は「介護事業の基礎知識バージョンアップ編」として、記事を紹介しています。

 

「介護事業の基礎知識バージョンアップ編」は、ケアビジネスに関心がある方やこれから介護事業の経営に取り組まれようと考えられている方を対象に、介護事業に関する基本的で重要な事項を紹介する内容にしていきます。

 

入門書よりさらに分かりやすい「門前書」を目指して、介護事業の基礎知識をバージョンアップさせるとともに、お会いする介護事業者の方の取り組み方や考え方などを紹介していきたいと思っております。

 

【介護事業の基礎知識バージョンアップ編】の大東市の取り組みの紹介記事は次のとおり。

・「大東市がつくった株式会社が、総合事業改革塾を開校する。」はこちら(7/29)

・「大東市がつくった株式会社の理念は、全国で200億円~1,000億円の社会保障費を削減し、国民を健康にする」はこちら(7/30)

・「大東市の逢坂伸子氏の取り組み その1」はこちら(8/1)

・「大東市の逢坂伸子氏の取り組み その2」はこちら(8/3)

・「NHKクロ現プラス『介護保険の大改革』大東市の取り組み その1」はこちら(8/5)

・「NHKクロ現プラス『介護保険の大改革』大東市の取り組み その2」はこちら(8/6)

・「NHKクロ現プラス『介護保険の大改革』大東市の取り組み その3」はこちら(8/8)

 

月・水・金は次のとおり税務の記事を

月曜日は「マイホームの税金の手引き」

水曜日は「会社設立後に必要な手続きと必要な書類」

金曜日は「いざそのときにあわてないための相続税や贈与税に関する知識」

 

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