“軽度者(要介護1・2)への生活援助サービスに関する給付の在り方について”【介護保険制度の見直しに関する意見】~ 2040年問題㉗
2019年12月に開催された社会保障審議会・介護保険部会において、2040年を踏まえた2021年度の「介護保険制度改正」の考え方があきらかになっています。
介護保険制度見直しのポイントは、次の5つです
Ⅰ 健康寿命の延伸(介護予防・地域づくりの推進)
Ⅱ 保険者機能の強化
Ⅲ 地域包括ケアシステムの推進
Ⅳ 認知症施策の総合的推進
Ⅴ 持続可能な制度の構築・介護現場の革新
1 介護人材の確保・介護現場の革新
2 給付と負担
Ⅵ その他の課題
このうち、今回は「給付と負担」の中で取りあげられている
“軽度者(要介護1・2)への生活援助サービスに関する給付の在り方について”
を紹介します。
この論点の経過と状況は次のとおりです。
総合事業は平成26年の介護保険法改正で創設された事業です
総合事業は、既存の介護サービス事業者に加えて、NPO や民間企業などの多様な主体が介護予防や日常生活支援のサービスを総合的に実施できるようにすることで、市町村が地域の実情に応じたサービス提供を行えるようにすることを目的としています。この事業は平成26年の介護保険法改正で創設された事業です。
この改正により、要支援1・2の者の訪問介護と通所介護が、個別給付から総合事業へと移行しました。
総合事業が目指すサービスは、まだ途上です
総合事業の実施状況については、サービス利用量について、給付から総合事業へ移行した前後で約4千人を抽出した調査では、利用者一人あたりの利用日数について移行前後において大きな変化はありません。
一方、サービス別事業所数を見ると、制度改正前の介護予防サービスと同じ基準で提供されるサービスの割合が大きく、市町村の実施状況を見ても、住民主体のサービスなどの多様なサービスが実施されている市町村数は6~7割にとどまっています。
介護軽度者への生活援助サービスについて、給付の在り方を検討することになっています
「第8期介護保険事業計画期間において、軽度者に対する生活援助サービスやその他の給付について、地域支援事業への移行を含めた方策について、その結果に基づき必要な措置を講ずる」となっています。
軽度者に対する給付の在り方の視点は、次のとおりです
①要支援者よりも介護の必要性の高い要介護者について、その状態像を踏まえた適切なサービス提供を確保する必要があります。
②総合事業の実施状況や、介護保険の運営主体である市町村の意向を踏まえる必要があります。
③今後の高齢化の進展や現役世代の減少を踏まえたサービス提供の必要があります。
給付の見直し(軽度者の生活援助サービス等の地域支援事業への移行)に慎重な立場からの意見は次のとおりです
■見直しは、将来的には検討が必要ですが、総合事業の住民主体のサービスが十分ではなく、地域ごとにばらつきもある中では、効果的・効率的 ・安定的な取組は期待できません。
まずは、現行の総合事業における多様なサービスの提供体制の構築等を最優先に検討すべきです。
■見直しは、総合事業の実施状況や市町村の意向を踏まえて慎重に検討すべきです。総合事業の課題である実施主体の担い手不足が解消される見込みもない中では市町村も対応できず、現段階での判断は現実的ではありません。
■要介護1・2の方は認知症の方も多く、それに対する自治体の対応体制も不十分です。受入体制と効果的な対応策が整備されるまでは、見直しは時期尚早です。
■介護離職ゼロの観点や利用者の生活実態を十分踏まえて慎重な検討が必要です。
■訪問介護における生活援助サービスは身体介護とあわせて一体的に提供されることで有用性が発揮され、利用者の生活を支えています。要介護度にかかわらず同量のサービスを受けています。切り離した場合には状態が悪化して給付増につながる懸念もあり、慎重に検討すべきです。
■介護サービス利用者の負担増となることを懸念します。要介護1・2の方は軽度者ではなく、認知症の方もおり、重度化防止のためには専門職の介護が必要です。
施設に入れない、低所得で高齢者向け住まいに入れないなど様々な理由で生活援助サービスを必要としている方がいることに留意が必要です。 たとえ総合事業が充実したとしても、要介護認定を受けた人の給付の権利を奪うことは反対です。
一方で、見直しに積極的な立場からの意見は次のとおりです
■社会保険料の負担増により中小企業や現役世代の負担は限界に達しており、制度の持続可能性を確保するため、 見直しを確実に実施すべきです。見直しを行わない場合には、その要因と対応策を検討するなど、見直しに向けた道筋を示すべきです。
■人材や財源に限りがある中で、専門的サービスを必要とする重度の方に重点化することが必要であり、見直しを実施すべきです。
■大きなリスクは保険制度で、小さなリスクは自己負担で、という考え方に基づき、給付と負担にメリ ハリを付けることが必要です。軽度者への生活援助サービスについてもその観点から考えるべきです。
■軽度者に対する給付の見直しの観点からも、総合事業の実施体制の構築に向けた更なる取組を具体的に明らかにした上で、早期に実施すべきです。
その他の意見は次のとおりです
■介護が必要になる主な理由は認知症であり、要介護1・2で介護の負担が軽いということはありません。要介護1・2の人を軽度者と称するのは誤解を与えかねません。
■軽度者の生活援助サービス等に関する給付の在り方については、総合事業の実施状況や介護保険の運営主体である市町村の意向、利用者への影響等を踏まえながら、引き続き検討を行うことが適当です。
(出所:社会保障審議会・介護保険部会資料 19/12/27)
変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する(ピーター F.ドラッカー)
Never waste a good crisis!
春の1日を元気でお過ごしください。
2040年問題
① 介護保険制度地域支援事業の「生活支援サービス」へのニーズの増加
② 介護サービスの利用者数は2040年度までに約1.5倍に増える見込です
③ 「ポスト2025年」2040年に向けて介護事業を考えるときの視点
④ 2040年に向けて介護事業を考えるときの視点「健康寿命の延伸」とは
⑤ 介護事業を考えるときの視点「医療・福祉サービスの改革」とは
⑥ 介護事業を考えるときの視点「健康寿命の延伸プラン」の内容とは
⑦ 生産性の向上を図るための「医療・福祉サービスの改革」の内容とは
⑧ 「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」マンパワーシミュレーション
⑨ 介護ロボット開発等加速化事業と税制優遇措置(税額控除と固定資産税の特例)
⑩ 介護ロボットの導入による業務負担軽減と経営力向上計画の作成
⑪ 「管理者要件」主任ケアマネジャー以外も継続可能です。経過措置を6年間延長
⑬ 2021年度「介護保険制度改正の全体像」(介護保険制度の見直し関する意見)
⑭ 「一般介護予防事業の推進」~介護保険制度の見直し関する意見
⑮ 総合事業の効果的な推進 ~ 介護保険制度の見直し関する意見(介護保険部会)
⑰ 保険者(市町村)機能の強化を図るためのPDCAプロセスの推進
⑱ 保険者(市町村)機能の強化【調整交付金】【データ利活用の推進】
㉑ これからの介護保険事業計画における「認知症施策の総合的な推進」
㉒ 「介護人材の確保と介護現場の革新」~介護保険制度の見直し関する意見
㉓ 被保険者範囲と受給者範囲の見直しの視点【介護保険制度の見直し関する意見】
㉔ 今後の補足給付の在り方についての検討【介護保険制度の見直し関する意見】
㉖ ケアマネジメント(居宅介護支援)の10割給付(自己負担はゼロ)の見直し
高齢化に伴う日本の社会的課題に対して、会計・税務専門職としての役割を果たしたいと考えております。
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火曜日は、介護事業に関する記事を紹介しています。
ブログ記事は
http://www.y-itax.com/category/kaigo/
介護職員等特定処遇改善加算(2019年10月実施)
③ 勤続10年以上の介護福祉士がいない「経験・技能のある介護職員」のルール
④ 勤続10年以上の介護福祉士がいない「経験・技能のある介護職員」のルール
⑦ 特定処遇改善加算と処遇改善加算を合計した上乗せ率、最上位20%
⑧ 改善計画書作成2つのポイント。「特定加算の見込額」と「賃金改善の見込額」
⑨ 改善計画書の作成ポイント「各々のグループの平均賃金改善額を算出」
⑩ 改善計画書の作成ポイント。3要件のうち「職場環境等要件」とは
⑬ 4月から“年5日の年次有給休暇取得の義務”をご存じですか
⑭ 2019年4月から「労働時間の状況の把握」が義務化されています
⑮ 「職場環境等要件」と介護プロフェッショナルキャリア段位制度
⑯ 特定加算(Ⅱ)の算定にあたっては介護福祉士の配置等要件は満たす必要はない
⑳ 事業所内で働く介護職員がすべて「経験・技能のある介護職員」である場合
㉑ 介護だけではなく、看護や障害福祉サービスの業務を兼業している職員がいる場合
2025年に向けた介護人材の確保~介護人材確保の具体的な方策
③ なぜ、介護職は働き続けるためのキャリアパスの構築ができないのか?
④ 介護職に必要なキャリアパスのキーワードは「多職種によるチームケアの推進」
⑨ 介護の在留資格。外国人の在留資格「特定技能」(介護)の創設
ブログは曜日により、次のようにテーマを決めて書いています。
・月曜日は「開業の基礎知識~創業者のクラウド会計」
・火曜日は「介護事業」
・水曜日は「消費税」
・木曜日~日曜日はテーマをきめていません。
免責
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