会社が社長から土地を買う。その時の時価をどう算定するか「土地の売買編①」
水曜日は、「同族会社とその役員との取引」について税務上の問題点となるケースを取りあげて紹介しています。10回目です。
今回は、会社と社長との間の「土地の売買」について紹介します。まず、会社が社長から土地を購入する場合、その後は逆のケースで社長から会社から土地を購入するケースを検討します。
「会社が、社長から土地を買う場合」を紹介します。(買主:会社、売主:社長)
1 同族会社では慎重に時価を算定する必要があります。
会社が社長から土地を買う場合、社長は会社に高く買ってもらいたい。逆に、会社が社長に土地を買ってもらう場合に、例えば、今期の会社の利益を相殺するために安く売って損失を出したい、など個別の事情で恣意的な操作が入る余地があります。
取引の当事者間で、極端に高い価格や低い価格で売買したいという思惑によって、取引価格が時価から乖離する可能性が高くなります。
相手方が他人である第三者ですと、相互に自分が有利なるように取引を考えます。そのような恣意的で個別の事情は入りません。
このようなことから、同族会社と社長(役員)との取引は、時価で行われた取引かどうかという観点から、税務上チェックが厳しくなります。
2 土地の時価とは
第三者との売買であれば、経済的取引として当事者間での合意の価額が時価となるので、時価の問題は生じません。
一方、同族関係者間では、恣意的な価額(時価よりも高い価格や低い価格)で売買が成立してしまいます。その結果、租税回避が行われることが可能となってしまいます。
ですから、時価とは、恣意的ではない金額、客観的に合理的な価額ということになります。
本来であれば、土地鑑定の専門家である不動産鑑定士の不動産の鑑定評価を取れば、適正な時価が算定されます。しかし、鑑定費用はそれなりにかかりますし、時間も必要となります。そこで、次のような時価を参考に検討することになります。
土地には、次のようにいくつもの時価があります。
① 公示価格
国土交通省が公表。1月1日時点。実勢価格の約90%。しかし、すべての土地に公示価格が決められているわけでありません。
② 固定資産税評価額
各市区町村が公表。1月1日時点。公示価格の約70%。しかし、毎年1月1日といってもいったん決めた価格は3年間据え置かれます。2年目以降は単純に計算できません。
③ 路線価
国税庁が公表。1月1日時点。公示価格の約80%
不動産鑑定の評価や様々な公的な評価を斟酌しながら、慎重に時価を検討することになります。
次回12/20(水)は、「会社が役員から土地を買う」を続けて紹介します。売主(社長)の譲渡所得と買主(会社)の税金を考えます。
会社と役員の取引には、思わぬところで税務上のリスクが発生することがあります。
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水曜日は、「同族会社とその役員の手引き」を紹介しています。
次のような順序で解説してきました。あてはまる事例を参考にしてくださいね。
同族関係者間の建物貸借の税務ルール
・「会社が社長から建物を借りる」はこちら(10/11)
・「会社が社長から建物を借りる、社長の税金」はこちら(10/18)
・「社長が会社から建物を借りる、家賃のルール」はこちら(10/25)
・「社長が会社から建物を借りる、低額家賃の場合」はこちら(11/1)
同族関係者間の金銭貸借の税務ルール
・「会社が社長からお金を借りる」はこちら(11/8)
・「会社が社長からお金を借りる、高金利の場合」はこちら(11/15)
・「会社が社長からお金を借りる、無利息の場合」はこちら(11/22)
・「社長が会社からお金を借りる」はこちら(11/29)
・「社長が会社からお金を借りる、無利息の場合」はこちら(12/6)
※ 今回から、同族関係者間の土地の売買ルールを紹介しています。
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・「届出は税務署からスタートします「事業の各種届出から確定申告まで」開業のための基礎知識①」はこちら(12/11)
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