「法人成り(ほうじんなり)」の王道の節税メリット。役員報酬、給与や退職金を活用します。
水曜日のブログでは会社で事業をした場合のメリット(「法人成り」)のポイントを、おさらいしてお伝えしています。前週の水曜日では、法人から受け取る報酬や給料の「給与所得控除」の活用や利益を家族に分散するという考え方を紹介しました。
給与や報酬の点から「法人成り」のメリットを、もう少し具体的に紹介します。
① 役員報酬が損金にできる。
個人事業では、事業所得からの事業主自身の給与は必要経費になりません。一方、会社の場合、その役員報酬が費用として認められ必要経費(損金)となります。
② 会社の利益を家族に分散できる。
会社の場合は家族従業員の給与が損金になります。ですから会社の利益を家族に分散できることになります。
③ 給与所得控除額が活用できる。
会社から支払われる役員報酬や給料は、所得税の課税対象となりますが、給与所得の金額の計算上、給与所得控除額(概算の必要経費)を控除することができます。
また、家族の給与からも給与所得控除額が控除され、事業主と家族従業員の課税対象となる所得を圧縮することができます。所得税は超過累進税率のため、所得分散することにより税負担を抑えることができます。
④ 配偶者控除や扶養控除などの所得控除が活用できる。
個人事業者の事業所得でも白色申告の専従者控除や青色申告の青色専者給与を利用することができます。会社と同じように、給与扱いで利益を家族に分散できます。
しかし、この場合には、対象となった配偶者や家族を配偶者控除や扶養控除の対象とすることはできません。
一方、会社から給与として支払いを受ける場合、103万円以下であれば配偶者控除や扶養控除の対象にできます。言い換えますと、会社の場合は、通常の従業員と同じ取り扱いをすることができます。
配偶者控除や扶養控除は、年間38万円の所得控除ですので、103万円以下の給与を支払っている場合は、この控除額分について所得を減少することができます。
(注:平成30年分以後の所得税の「配偶者控除」については改正があります。)
退職金の支給についても「法人成り」のメリットがあります。経費(損金)になります。
会社の場合、役員(事業主)への退職金は経費(損金)になりますが、個人の場合は事業主への退職金は認められません。
ようするに会社の場合の、給与、退職金などは次のようになります。(すべて経費にできます。「〇」は経費(損金)になるという意味です。)
・ 事業主 給料〇 賞与〇 退職金〇
・ 家族従業員 給料〇 賞与〇 退職金〇
退職金は受け取る方でもメリットがあります。
受け取る方では、退職金は退職所得となり税負担が1/2になります。退職所得の金額は、次のように計算します。
(収入金額-退職所得控除額)×1/2=退職所得の金額
支給を受けた役員や従業員の税負担が軽くなる仕組みになっています。このように、法人で事業を行う方が個人事業よりも、節税の工夫の幅が広くなるというメリットがでてきます。
月・水・金は次のとおり税務の記事を
月曜日は「マイホームの税金の手引き」
水曜日は「会社で事業をした場合(法人成り)のメリット」
・「会社にした場合の特有のメリット。『法人成り』のメリットを考えます。」はこちら(8/23)
金曜日は「いざそのときにあわてないための相続税や贈与税に関する知識」
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火・木・土曜日は、最近は「介護事業の基礎知識バージョンアップ編」として、記事を紹介しています。
「介護事業の基礎知識バージョンアップ編」は、ケアビジネスに関心がある方やこれから介護事業の経営に取り組まれようと考えられている方を対象に、介護事業に関する基本的で重要な事項を紹介する内容にしています。
最近の【介護事業の基礎知識バージョンアップ編】の記事は次のとおりです。
「『大阪府における介護施策の現状と課題、対応の方向性』では、『データベースが整備されていない問題』『ケアマネジャーの資質向上』が必要という指摘」はこちら(8/29)
「軽度者に対する生活援助サービスの給付のあり方」はこちら(8/27)
「資金ショートを防ぐ、介護事業の開業時運転資金の調達は計画的に。」はこちら(8/26)
「大阪府内の有料老人ホーム等における介護サービス利用状況の実態調査」はこちら(8/24)
「大阪府内の『サ高住等』は、サービス利用が非常に高い。」はこちら(8/22)
介護事業は社会課題解決事業です。
保険料と税で運営されている社会保険制度としての制度ビジネスです。3年ごとに改定される制度変更には、しっかりと対応することをおすすめします。
課題をお持ちの開業を準備されている方や準備を検討されている方は、是非、ご相談ください。一緒にベストな解決策を検討しましょう。
制度変更により、大きく収入が落ち込んで事業縮小や廃業を余儀なくされるケースを避けるために、制度改定を予測して、事業経営に活用することが大切だと思います。
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