「役員貸付金」社長が会社からお金を借りる場合は、税金の問題はどうなりますか?
水曜日は、「同族会社とその役員との取引」について税務上の問題点となるケースを取りあげて紹介しています。8回目です。
5回(11/8)、6回(11/15)、7回(11/22)と「会社が社長からお金を借りるケース~役員借入金」を紹介してきました。今回は、その逆です。
「社長が会社からお金を借りる場合」は、税金の問題はどうなるかを紹介します。(借り手:社長、貸し手:会社)
社長が、会社からお金を借りる場合の注意点を考えていきます。
「会社から社長が多額の資金を借りています。会社では社長からその貸付金の利息を受け取っていません」という状態はないでしょうか?同族会社では起こりうる取引かもしれません。
このような場合には、次の3点に注意してくださいね。
1 金銭消費貸借契約書の作成
2 適正な利息の設定
3 給与として課税しなくてもよい場合があります
3 取締役会議事録(取締役会の承認)または株主総会議事録(株主総会の承認)
1 金銭消費貸借契約書の作成とは
会社が社長にお金を貸すということは、会社と社長との間で「金銭消費貸借契約」を締結することと同じです。通常の金銭消費貸借契約を締結する場合と同様です。次の点を明らかにした契約書を作成することが大切です。
① 当事者の氏名
② 金額と金銭交付日
③ 契約日
④ 弁済方法と弁済期限
⑤ 利息および利率
2 適正な利息の設定とは
お金を貸すのは会社です。会社は経済的合理性を追求する営利法人ですので、適正な利率による利息を社長から徴収する必要があります。税法では、会社と役員がお金の貸し借りをする場合、次のように「適正な利率」を定めていますので、その金利を設定する必要があります。
① 会社が他から借り入れて貸し付けた場合 …その借入金の利率
② その他の場合(平成29年中に貸付けを行ったもの)…1.7%
もし、会社が、社長にお金を貸し付けたが、利息を徴収していないということになると、税務上は、適正な利率により計算された利息に相当する金額が、社長に対する給与として取り扱われます。
3 しかし、給与として課税しなくてもよい場合があります。
役員又は使用人に無利息又は低い利息で金銭を貸し付けた場合に、次の①から③のいずれかに該当する場合には、上記2にかかわらず、給与として課税しなくてもよいことになっています。
① 災害や病気などで臨時に多額の生活資金が必要となった役員又は使用人に、その資金に充てるため、合理的と認められる金額や返済期間で金銭を貸し付ける場合
② 会社における借入金の平均調達金利など合理的と認められる貸付利率を定め、この利率によって役員又は使用人に対して金銭を貸し付ける場合
③ ①及び②以外の貸付金の場合で、上記2の利率により計算した利息の額と実際に支払う利息の額との差額が1年間で5,000円以下である場合
4 取締役会議事録(取締役会の承認)とは
会社法での問題が発生します。会社と社長との取引になります。「自己取引」といいます。自己取引をする場合には取締役会の承認を得ることが必要になります(取締役会を設置していない会社においては、株主総会の承認を得ることが必要になります)。
くれぐれも安易にかんがえないようにしてくださいね。 会社と役員の取引には、思わぬところで税務上のリスクが発生することがあります。
ご相談については、電話やメールでお気軽にご相談ください。(来所していただける場合初回無料です)。
次回12/6(水)は「無利息または低い利率のケース」を紹介します。
水曜日は、「同族会社とその役員の手引き」を紹介しています。
・「無利息で、会社が社長から高金利でお金を借りる場合」はこちら(11/22)
・「役員借入金~会社が社長から高金利でお金を借りる場合」はこちら(11/15)
・「会社が、社長からお金を借りる場合に利息と税金はどうなりますか?」はこちら(11/8)
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