会社が、社長に対して低額な家賃で住宅を貸す場合は、役員報酬に問題が発生します。
水曜日は、「同族会社とその役員との取引」について税務上の問題点となるケースを取りあげて紹介しています。
同族会社とその社長との間では、取引が行われるケースがよくあります。このような場合には、通常の市場での取引では考えられないような内容で、同族会社とその社長との間で行われる取引があります。
問題を発生させないために、税務上の予防として対策を考えていきたいと思います。
前回は、「会社が、社長に対して住宅を貸す場合」を紹介し、税務上適正な家賃のルールがあることを解説しました。適正な家賃を支払っていれば、問題にはなりません。
問題が発生するのは、適正な家賃ではなく、これらの家賃を下回る家賃しか負担していなかったり、まったく家賃を支払っていないケースでは問題が発生します。
① 低額の家賃しか受け取っていない会社側の税金を考えますと
会社は通常受け取るべき家賃を受け取っていないことになります。通常の家賃と実際の家賃との差額が、役員に対する給与とみなされて※課税されます(役員報酬の源泉徴収の問題が発生します)。
一方では、会社側の損益計算では、差額は受取家賃として益金の額に算入されるとともに、それに相当する金額は過大役員報酬とならない限り、役員報酬として損金の額に算入されます。
次のように考えます。
役員報酬(損金算入) 〇〇円 / 受取家賃(益金算入) 〇〇円
② 社長の税金(所得税等)を考えますと
会社から住宅を賃借している社長が、税務上の適正な家賃を支払っていない場合には、適正家賃から実際に負担している家賃の差額分が、社長の役員報酬になりますので、社長の給与所得の収入金額はその差額分を加算して、所得税や住民税を計算します。
別の論点ですが、社長が会社から社宅を借りる場合、社宅使用契約書を作成しておくことも必要です。手続きを忘れないようにしてください。
契約書には、ⅰ社宅の表示、ⅱ使用目的、ⅲ賃料、ⅳ賃借期間を定めておく必要があります。
※ <参考>法人税基本通達9-2-9 債務の免除による利益その他の経済的な利益
《役員給与》及び《過大な使用人給与の損金不算入》に規定する「債務の免除による利益その他の経済的な利益」とは、次に掲げるもののように、法人がこれらの行為をしたことにより実質的にその役員等(省略)に対して給与を支給したと同様の経済的効果をもたらすもの(省略)をいう。
(6) 役員等に対してその居住の用に供する土地又は家屋を無償又は低い価額で提供した場合における通常取得すべき賃貸料の額と実際徴収した賃貸料の額との差額に相当する金額
会社と役員の取引には、思わぬところで税務上のリスクが発生することがあります。
税金の常識は、皆様が思っておられる日常の常識と相違する場合がありますので、専門家に相談されることをおすすめします。
会社と役員の税金に関してご心配な方は、電話やメールでお気軽にご相談ください(初回は無料です)。
次のとおり税務などの記事を紹介しています。
月曜日は「開業の基礎知識~初めて開業する方に、税理士からお伝えします」
水曜日は「同族会社とその役員の手引き」
・「会社が社長に対して住宅を貸す場合に、家賃と税金はどうなりますか?」はこちら(10/25)
・「会社に事業用建物を貸した社長の税金~極端に高い家賃でなければ問題はありません」はこちら(10/18)
・「会社が、社長から事業用建物を借りる場合、家賃と税金はどうなりますか?」はこちら(10/11)
金曜日は「いざそのときにあわてないための相続税や贈与税に関する知識」
土曜日は次のとおり会計の記事を紹介しています。
「“会計”に挫折した起業者の方を対象に、起業者の会計超理解ハンドブック」
日曜日は
「2018年3月申告用の手引き 住宅取得等資金の贈与税の非課税の誤りやすい事例」
火・木曜日は、「介護事業の基礎知識バージョンアップ゚編」として、記事を紹介しています。
「介護事業の基礎知識バージョンアップ編」は、ケアビジネスに関心がある方やこれから介護事業の経営に取り組まれようと考えられている方を対象に、介護事業に関する基本的で重要な事項を紹介する内容にしています。