介護会計では「会計の区分」のため、共通費用はルールに従って按分(あんぶん)します。
土曜日は「介護事業者のための会計ハンドブック」として、経営に必要な会計を分かりやすく紹介しています。今回9回目です。
「会計」と言っていますが、要するに「お金の管理」です。
領収書を整理したり、伝票をつくったりすることは、会社にとって必要なことですが、経営者にとって大切なことは、「お金の動きを通して会社の状態を把握し、経営をコントロールする。」(「起業の技術」浜口孝則:かんき出版)」ことです。
会計ルールを定めた通知は「介護保険の給付対象事業における会計の区分について(平成13年3月28日付け老振発第18号)」です。
通知では
4つの会計処理ルールが例示されていましたが、どの方式を採用するにしても、「サービスに共通して支出した経費をどう区分するのか?」という問題が生じます。
通知は次のような考え方を示しています。
① 勘定科目と按分方法を示しています。
「それぞれの事業毎に区分が想定される科目及びその按分方法並びに様式についての参考例を示すものである」
② 例示以外の合理的な方法を採用した場合も運営基準を満たします。
「具体的科目及び按分方法は例示のとおりとするが、これによりがたい場合は、本通知とは別に実態に即した合理的な按分方法によることとして差し支えない。」
例えば、介護サービス事業で通所介護事業と訪問介護事業を運営している場合には、2つの事業に共通して発生する費用(例えば、社長や職員の給料、介護用品費、旅費交通費、地代家賃など)を、通所介護事業と訪問介護事業に按分する必要があります。
この場合に使用する基準が、「按分基準(按分方法)」です。通知は、次のように按分基準を例示しています。
① 給与費
… 勤務時間割合、職員人員配置割合、届出人員割合、延利用者数割合
② 材料費
… 各事業所消費金額、実際食数割合、延利用者数割合、各事業別収入割合
③ 厚生費
… 給与費割合、延利用者数割合
④ 旅費交通費、通信運搬費、交際費、諸会費、雑費、渉外費
… 延利用者数割合、職種別人員配置割合、給与費割合
⑤ 消耗品費、保険衛生費、被服費、教養娯楽費、日用品費、広報費
… 各事業所消費金額割合、延利用者数割合
⑥ 車両費
… 使用高割合、送迎利用者数割合、延利用者数割合
⑦ 会議費
… 会議内容により事業個別費で区分、延利用者数割合
⑧ 光熱水費
… メーター等による測定割合、建物床面積割合
⑨ 修繕費
… 建物修繕は当該修繕部分により区分、建物修繕以外は事業個別費として按分など
⑩ 賃借料、地代家賃等
… 賃貸物件特にリース物件については、その物件の使用割合により区分など
⑪ 保険料
… 建物床面積割合により按分など
⑫ 徴収不能額
… 各事業の個別発生金額により区分、困難な場合は各事業別収入割合
⑬ 支払利息
… 借入目的別の借入金に対する期末残高割合により区分。困難な場合は、土地建物は建物延面積割合。それ以外は延利用者数割合
なお、どの按分基準を選択するかについては任意です。原則として継続して適用する必要があります。
気づかれたと思いますが、例示では「延利用者数割合」がよく示されています。「利用者数割合」というのは、サービスの消費割合の近似を表します。費用の発生割合を把握するという意味で、按分基準のルールに適合するのだと思います。
会計の区分の検討にあたっては、事前に専門家に相談されることをおすすめします。自主点検表ではそのチェックが求められています。
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月曜日は「マイホームの税金の手引き」
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