その2「地域に根差した公的介護保険外サービスのポイント」 【卯津羅泰生(うずらやすお)氏】
大阪健康寿命延伸産業創出プラットホーム(略称「OKJP」)の「新規ビジネスプラン創出研究会(介護保険外サービス分野)」の2回目に参加しました。
7日(木)に続き、超高齢社会健康・医療・くらし研究所所長、よどきり医療と介護のまちづくり株式会社の部長である卯津羅泰生氏のお話をお伝えします。
前回は「介護市場は今後どうなっていくのか?」と「公的介護保険外サービス市場をどう考えるのか?」をご紹介しました。前回と同じく、同氏が示された点で、私が重要だと考えたことを以下に述べます。
フレイル、プレフレイルの状態の高齢者を支援している中で、今後、公的介護保険外サービスを考える場合のヒントは次のとおりです。
① 管理栄養士の支援が大切になる。
フレイル※とは要支援までの弱くなっていく段階をいいます。フレイルの状態の高齢者には食生活が重要な意味を持ちます。訪問看護ステーションなどで、管理栄養士を活用したサービスを提供することが大切です。
② 在宅医療・看護・看取りに対応する民間保険がありません。
上図(「フレイルの位置づけと経済的背景」)の中で、右肩上がりの赤い太線は在宅医療や看取りに係る費用の負担が加齢とともに増加することを示しています。増加の割合が高いので、公的医療、公的介護保険および従来の民間保険などでまかなわれるコストゾーン(グレーの部分)がおいつかない状態です。負担が不足する部分(上図でいうと丸いブルーの範囲を示します。
その不足する部分(在宅医療・看護・看取り)に対応できる「民間保険」がありません。
※ フレイルとは、加齢とともに運動機能や認知機能等が低下し、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態のことです。適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態です。健康な状態と日常生活でサポートが必要な介護状態の中間を意味します。多くの方は、フレイルを経て要介護状態へ進むと考えられています。言い換えると、フレイルは、高齢期で介護が必要となる前の段階(健常と要介護の中間の状態)を表します。
公的介護保険外サービスの収益源を考える場合に大切だと思うことは、次の点です。
① 誰からお金をもらうのか?
通常は利用者からお金をいただくのですが、利用者以外にお金を出す意思決定者(家族等)が存在します。その点を考慮するする必要があります。
② ビジネスの組み立てに何が必要とされるのか?
AI、IoT時代におけるヘルスケアのデータ情報は、改正個人情報保護法の匿名加工情報※として位置づけられます。今後、有用なデータ情報となります。
※ 匿名加工情報とは、個人情報を加工して、通常人の判断をもって、個人を特定することができず、かつ、加工する前の個人情報へと戻すことができない状態にした情報のことです。匿名加工情報には、個人情報に関するルールは適用されず、一定の条件の下、本人の同意をとらなくても自由に利活用することができます。
これにより、新事業や新サービスの創出や、生活の利便性の向上が期待されています。
同氏の底意は、「公的介護保険外サービスの中で、新しいサービス生み出す真の競争相手は、今後は介護業界という狭い産業分野ではなく、ビッグデータの活用などの事業に取り組んでいる先端企業のグーグルやトヨタなどになる。」というものだと考えます。
火・木・土曜日は、「介護事業の基礎知識バージョンアップ編」として、記事を紹介しています。
「介護事業の基礎知識バージョンアップ編」は、ケアビジネスに関心がある方やこれから介護事業の経営に取り組まれようと考えられている方を対象に、介護事業に関する基本的で重要な事項を紹介する内容にしていきます。
最近の「介護事業の基礎知識バージョンアップ編」の記事は次のとおりです。
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保険料と税で運営されている社会保険制度としての制度ビジネスです。3年ごとに改定される制度変更には、しっかりと対応することをおすすめします。
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制度変更により、大きく収入が落ち込んで事業縮小や廃業を余儀なくされるケースを避けるために、制度改定を予測して、事業経営に活用することが大切だと思います。
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