結婚20年以上の妻に「贈与」で自宅を遺産分割の対象外にできます ~ 贈与や相続・譲渡など資産税[70]
相続税に関する記事です。
今回は
しかし、自宅を妻にプレゼントする場合は、生前贈与より「遺贈」の方がメリットは多いです
を紹介します。
相続法が改正され配偶者への自宅の贈与または遺贈を保護する制度が新設されています
婚姻期間が20年以上である配偶者の一方が他方に対し,自宅を遺贈または贈与した場合は,計算上、遺産の先渡し(特別受益)を受けたものとして取り扱わなくてよいことになっています。
これにより、次のようなことができるようになりました。
具体的には、夫の遺産が次のような場合
相続人: 配偶者と子2人
遺 産: 自宅(持分2分の1) 2,000万円(評価額)
預貯金: 6,000万円
配偶者に自宅(持分2分の1)2,000万円を生前贈与済み
改正により生前贈与分については相続財産とみなす必要がなくなりますので、配偶者の遺産分割における取得額は
8,000万円(自宅の1/2+預貯金)×1/2=4,000万円となります。
配偶者の最終的な取得額は
4,000万円+2,000万円(生前贈与分)=6,000万円となり、贈与がなかったとした場合に行う遺産分割より多くの財産を最終的に取得できることとなります。
しかし、仲の良い夫婦で、自宅を妻にプレゼントする場合は、生前贈与と遺贈のどちらがよいでしょうか?
次の理由から生前贈与より遺贈が良いです。
① 相続税の特例措置である小規模宅地等の特例は、相続時にのみにしか使えません。生前贈与には使えません(ただし、自宅の贈与税の配偶者控除という特例があります)
② 登録免許税や不動産取得税などの税金は生前贈与よりも遺贈の方が安価です。
③ 配偶者への相続には、最低1億6千万円までの配偶者控除の税額軽減が適用できます。
③ 生前贈与の場合は、離婚や妻が先になくなるという想定外のリスクに対応できまません。
ただし、遺留分には注意します
相続人が最低限受け取ることのできる権利(財産)が遺留分です。
この遺留分を侵害している場合は、自宅の贈与であっても遺産分割の対象外となりません。遺留分を請求されることがあります。
言い換えますと、遺留分は法が定めた最低の取り分なので、持戻し免除の意思表示の影響は受けません。
<参考>
<参考>
民法903条 特別受益者の相続分
共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
4 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。
変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する(ピーター F.ドラッカー)
Every day is a new day!
夏の1日、朗らかにお過ごしください
ブログは曜日により、次のようにテーマを決めて書いています。
・月曜日は「創業者のクラウド会計」
・火曜日は「消費税」
・水曜日は「消費税」
・木曜日は「経理・会計」
・金曜日は「贈与や相続・譲渡など資産税」
・土曜日は「創業者のクラウド会計」
・日曜日はテーマを決めずに書いています。
免責
ブログ記事の内容は、投稿時点での税法その他の法令に基づき記載しています。本記事に基づく情報により実務を行う場合には、専門家に相談の上行ってください。