新設された配偶者居住権の説明の仕方と、そもそも配偶者居住権について考えるべきこと~ 贈与や相続・譲渡など資産税[67]
相続税に関する記事です。
今回は
夫(被相続人)の相続税の相談を受けた場合、配偶者居住権を配偶者(たとえば妻)を含む相続人に説明するとすれば
を紹介します。
ポイントとして、次のような説明することになるのでしょうか。
① 夫(被相続人)の所有する居宅に夫とともに暮らしていた妻は
相続人との遺産分割協議、遺言による居住権設定により居宅に居住する権利(配偶者居住権)を取得することができます。
② 配偶者居住権は
妻が死亡するまで有する終身の権利です。ただし、別途定めることもできます。
③ 建物の所有者は「登記を備えさせる義務」を負います
配偶者には、配偶者居住権の登記を求める権利があるということです。
配偶者が、配偶者居住権を登記したときは、建物について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができます。
④ 譲渡禁止です
この居住権を譲渡したり、他人に貸したりすることはできません。
そして、配偶者と相続人全員に対して
その趣旨、上記の4つのポイントや登記の必要性、居宅にかかる配偶者居住権とその敷地の利用権を妻が取得すること、その居宅と宅地の所有権は妻以外の相続人が取得することを説明します。
また
配偶者が配偶者居住権を放棄した場合や合意解除した場合は贈与税が課税されるということと、建物が消滅した場合などはみなし贈与課税の対象とされないなどを説明することが必要です。その説明を受けて、相続人で相談していただくことになります。
<参考>
→ 配偶者居住権の設定後、配偶者が配偶者居住権を放棄したときは贈与税が課税されます
→ 「配偶者居住権の消滅」がみなし贈与にあたる場合とみなし贈与にあたらない場合
相続税の相談を受けた際に、配偶者居住権について最低限、上のような説明をする必要があります。
しかし、そもそも配偶者居住権について説明するときは、次のようなことを考慮する必要があります
① 仲の良い相続人であれば、配偶者居住権という中途半端な権利ではなく、居宅を配偶者に相続させればよいし、あるいは共有で相続して、配偶者に居住を継続して継続してもらえばよい。
② 仲の悪い相続人であれば、建物と土地について、妻が死亡するまで処分権を失う遺産分割が可能になるとは思えない。配偶者居住権が設定されてしまえば、家賃も地代も収受することなく、配偶者が死亡するのを待たなければならない。
③ 遺言書、あるいは死因贈与契約で配偶者居住権が設定されるのはどのような場合なのか。妻の居住が心配であれば、居宅自体を遺贈し、死因贈与すればよいと思う。
④ 配偶者居住権の管理は可能なのか。修繕費と通常の必要費は妻の負担とされているが、固定資産税や火災保険料は誰が負担するのか。マンションの場合の管理費と修繕積立金は誰が負担するのか。
⑤ 車椅子生活になった場合には自宅をリフォームできるのか。配偶者の自立生活が難しくなり、介護老人ホームへの入居が必要になった場合には、介護老人ホームに入居後の居宅は空き家として放置するのか。建物と土地を取得した者も、処分もできず、担保にも提供できない資産を持ち続けるのだろうか。
(出所:「相続の話をしよう」、著者:税理士/公認会計士/弁護士 関根稔、15~16頁: 配偶者居住権という制度の導入で配偶者の居住は保護されるのだろうか)
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