遺言により推定相続人などの認知・排除をすることができます(遺言書の法定記載事項) ~ 贈与や相続・譲渡など資産税[35]
今回は
「推定相続人などの認知・排除」「特別受益に対する持戻しを免除」などの遺言の法定記載事項について
を紹介します。
遺留分の定めに反しない範囲で、遺言によって「誰が、何を、どれだけ相続するか?」を明確に定めておくことで、相続の問題は解決することが多いと思います。
こうしたことを踏まえて、遺言書の記載事項について検討します。
そもそも、遺言書の記載事項にはどのようなものがあるのかを考えてみます。
「遺言事項の法的効力」について
つまり、遺言書に記載することにより、具体的な法律上の効果が生じる事柄は何かです。
遺言によって法的な効力を与えられる事項は、おおまかには次の3つです。
■ 相続に関する事項(相続分の指定など)
■ 財産の処分に関する事項(遺贈など)
■ 身分に関する事項(遺言による認知・排除など)
法定記載事項としては18項目があります。
前回、次の6つを取り上げました。
① 共同相続人に対して相続分の指定ができます。
② 誰に何を与えるかなど遺産分割方法の指定できます。
③ 5年を限度とする遺産分割の禁止ができます。
④ 他人に財産を与えることができます。包括遺贈・特定遺贈といいます。
⑤ 遺言によって一般財団法人の設立することができます。
⑥ 遺言によって信託の設定ができます。
→ 遺言書を作成する際に、記載事項はどのようなものがありますか?
18の法定記載事項のうち、前回(①~⑥)に続いて、今回も6つを取り上げます。
⑦ 遺言により推定相続人の廃除をすることができます
原則として遺産は各法定相続人がそれぞれ法定相続割合で取得することになります。しかし、遺言者が相続させたくないと感じるような非行が推定相続人にあったというケースがあります。このような場合、遺言者は特定の相続人について排除することにより相続権を奪うことができます。
<参考>
民法893条
(遺言による推定相続人の廃除)
「被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。」
⑧ 推定相続人の廃除の取り消しをすることができます
遺言により廃除の取消をすることができます。
<参考>
民法894条
(推定相続人の廃除の取消し)
「被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができる。」
⑨ 嫡出でない子どもの認知をすることができます
嫡出でない子に相続人として財産を渡すためには、認知する必要があります。
認知を遺言によってすることができます。
<参考>
民法781条
(認知の方式)
「認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによってする。
2 認知は、遺言によっても、することができる。」
⑩ 未成年後見人の指定がすることができます
親権を行使する者がいなくなってしまう場合に、遺言により未成年後見人を指定することができます。
<参考>
民法781条
(未成年後見人の指定)
「未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。ただし、管理権を有しない者は、この限りでない。」
⑪ 未成年後見監督人を指定することができます
未成年後見人が適切に職務を遂行しているかを監督させるため、遺言で未成年後見監督人を指定することができます。
<参考>
民法848条
(未成年後見監督人の指定)
「未成年後見人を指定することができる者は、遺言で、未成年後見監督人を指定することができる。」
⑫ 特別受益者に対する特別受益(生前贈与・遺贈)に対する持戻しを免除する旨の意思表示をすることができます
相続人の中に特別受益を受けた者いるときは、その価額を相続財産の前渡しと考えて、相続開始時の財産に特別受益の価額を加えたものを相続財産として、相続分を算定します。
しかし、特別受益を考慮して相続内容を定めたという遺言者の意思を遺言書に明記することができます。
<参考>
民法903条
(特別受益者の相続分)
「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、または婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈または贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈または贈与の価額が、相続分の価額に等しく、またはこれを超えるときは、受遺者または受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
4 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物またはその敷地について遺贈または贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈または贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。」
上の第4項は改正された部分です。
相続法で「結婚20年以上の配偶者を優遇します」という趣旨のものです。
→ 40年ぶりに変わる相続法【7つの改正ポイント】~ 相続法の改正で大きく変わります
変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する(ピーター F.ドラッカー)
Every day is a new day!
春の1日を元気にお過ごしください。
【編集後記】
画像はコブシの花です。
早春に咲く白い花です。
冬が明ける合図となる花です。
ブログは曜日により、次のようにテーマを決めて書いています。
・月曜日は「創業者のクラウド会計」
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