井上寧(やすし)税理士事務所井上寧(やすし)税理士事務所

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2021.02.26.Fri | 税金(相続・贈与・譲渡)

相続人が認定NPO法人に土地を寄付した場合に、租税特別措置法第40条を適用しているときの寄付金控除の計算~ 遺贈寄付[23]



今回は

租税特別措置法第40条を適用しているときの寄付金控除の計算(土地の取得費で計算します)


を紹介します。

相続人が相続した財産を認定NPO法人に寄付する場合、次のように譲渡所得の基因となる資産かどうかで課税関係が変わります



① 現金・預金の寄付(譲渡所得の基因とならない資産)

② 土地・建物・株式などの寄付(譲渡所得の基因となる資産)

①と②とも共通して、租税特別措置法第70条の適用を受ければ、認定NPO法人に寄付した場合は、寄付した財産は相続税の対象にはなりません。

上の②のケースで「土地・建物・株式などの遺贈(譲渡所得の基因となる資産)をした場合で、措置法第40条の適用を受けるときは


次のようなイメージです。





課税関係は次のとおりです


ⅰ 寄付した相続人が2,000円を超える特定寄附金を支出した場合は、寄附金控除の対象となります。(所得税法第78条)この場合、寄付金額は土地等の取得費で計算します。

ⅱ 寄付財産は租税特別別措置法第70条の適用を受けることにより相続税の対象になりません(ただし相続税法66条第4項に注意します。)

ⅲ 租税特別措置法第40条の適用を受けます。相続人は譲渡所得税が課税されません。

ⅳ 認定NPO法人には贈与税は課税されません。ただし、相続税法66条第4項が適用される場合には贈与税が課税されます。


この課税関係のうち

「ⅰ」の相続人が受ける寄付金控除の計算を具体的に検討します


たとえば、次のような場合であったとき

相続人が認定NPO法人へ寄付した土地:時価2,000万円

・土地の取得費(被相続人の取得費):500万円

・相続人の総所得金額:700万円


寄付金控除の対象は、通常は土地を寄付した時の土地の時価2,000万円が原則となります。

しかし、措置法40条の適用を受けている場合は、寄付金控除の対象となるのは、土地の時価から「土地の譲渡所得を相当する金額を控除した金額(2,000万円-500万円=1,500万円)」を控除した金額になります。(措置法第40条第19項)

つまり、寄付金の対象となるのは土地の取得費(被相続人の取得費)500万円になります。

具体例の寄付金控除の計算は次のようになります。


ⅰ寄付金の額

2,000万円-(2,000万円-500万円)=500万円

ⅱ寄付金控除

a 700万円×40%=280万円

b 500万円

a < b いずれか少ない金額 280万円

c 寄付金控除 280万円-2千円=2,798,000円


<参考>

租税特別措置法第70条

(相続財産を公益法人などに寄附したとき特例)

相続や遺贈によって取得した財産を国、地方公共団体、公益を目的とする事業を行う特定の法人または認定非営利活動法人(認定NPO法人)に寄附した場合や特定の公益信託の信託財産とするために支出した場合は、その寄附をした財産や支出した金銭は相続税の対象としない特例です。

所得税法第78条

一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)

個人が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し、「特定寄附金」を支出した場合には、所得控除を受けることができます。これを寄附金控除といいます。


措置法第40条とは

(国等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税)

個人が、土地、建物、株式などの財産を法人に寄附した場合には、これらの財産は寄附時の時価により譲渡があったものとみなされ、これらの財産の取得時から寄附時までの値上がり益に対して所得税が課税されます。

これは、個人から法人に土地、建物などの財産が無償で移転するときに、個人に帰属する値上がり益に対する所得税を精算するための制度的要請によるものです。

措置法第40条第19項とは

第1項の規定の適用を受ける財産の贈与又は遺贈について所得税法第78条第1項の規定又は第41条の18の2若しくは第41条の18の3の規定の適用がある場合におけるこれらの規定の適用については、同法第78条第2項中「寄附金(学校の入学に関してするものを除く。)」とあるのは「寄附金(租税特別措置法第40条第1項(国等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税)の規定の適用を受けるもののうち同項に規定する財産の贈与又は遺贈に係る山林所得の金額若しくは譲渡所得の金額で第32条第3項に規定する山林所得の特別控除額若しくは第33条第3項に規定する譲渡所得の特別控除額を控除しないで計算した金額又は雑所得の金額に相当する部分及び学校の入学に関してするものを除く。)」と、第41条の18の2第1項中「その寄附をした者」とあるのは「第40条第1項の規定の適用を受けるもののうち同項に規定する財産の贈与又は遺贈に係る山林所得の金額若しくは譲渡所得の金額で所得税法第32条第3項に規定する山林所得の特別控除額若しくは同法第33条第3項に規定する譲渡所得の特別控除額を控除しないで計算した金額又は雑所得の金額に相当する部分及びその寄附をした者」と、「所得税法」とあるのは「同法」とする。


第66条  人格のない社団または財団等に対する課税

第4項

「持分の定めのない法人に対し財産の贈与または遺贈があつた場合において、贈与または遺贈により贈与または遺贈をした者の親族その他これらの者と特別の関係がある者の相続税または贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるときは、贈与税または相続税を課する。」




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