「前払金の保全措置を講じる義務がある有料老人ホームの対象が拡大」~地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の改正
改正においては、有料老人ホームの入居者保護のための施策が新設されています。その中から今回は「前払金の保全措置を講じる義務があるホームの対象が拡大」を紹介します。
今後は対象外だった2006年3月31日以前に開設したホームにも適用されます。
2006年度の老人福祉法の改正に伴い設けられた前払金の保全措置の対象が拡大されます。
改正前は保全措置を講じる対象は2006年4月以降に開設したホームに限られていました。
改正後は2006年3月31日以前に開設したホームも前払金の保全措置が必要になります。
ただし、改正後3年間の経過措置があります。
適用は2021年度からになります。
現在の「前払金の保全措置」とは
入居者保護の観点から、有料老人ホームの設置者に対し、家賃や入居一時金等の名目で前払金として一括して受領する場合、当該前払金の算定の基礎を書面で明示し、かつ、当該前払金について必要な保全措置を講ずることを義務付けています。(老人福祉法第29条第6項)。
前払金の保全義務については
原則として2006年4月1日以降に届け出た有料老人ホームに対して適用されるものであり、それ以前から事業を開始し、届け出ている有料老人ホームについては努力義務とされています。(老人福祉法附則(平成17年6月29日法律第77号)第17条第2項及び同法施行規則附則第3項並びに指導指針)
前払金の保全方法については
「厚生労働大臣が定める有料老人ホームの設置者等が講ずべき措置」(平成18年3月31日厚生労働省告示第266号)において、次の5つのいずれかの措置を講じることとされています。
① 銀行等との連帯保証委託契約
② 指定格付機関による特定格付が付与された親会社との連帯保証委託契約
③ 保険事業者との保証保険契約
④ 信託会社等(信託会社及び信託業務を行う金融機関)との信託契約
⑤ 高齢者の福祉の増進に寄与することを目的として設立された一般社団法人又は一般財団法人との間の保全のための契約で前記①から④に準ずるものとして都道府県知事が認めるもの(例えば、社団法人全国有料老人ホーム協会の入居者基金制度が該当)
しかし、現在、前払金の保全措置の義務がある有料老人ホームのうち、保全措置を講じていない施設があります。
(下図は「有料老人ホームを対象とした指導の強化について」平成29年3月21日付 厚生労働省老健局高齢者支援課長通知資料から)
また、下表のとおり前払金の保全措置が義務づけられていない有料老人ホームのうち、今後経過措置適用期間に保全措置が必要となる施設は211件あります。
有料老人ホームに対する定期的な調査が毎年行われていますし、事業者の方には入居者の居住の安定と適切な居住確保を率先して進めていただきたいと思います.
介護保険法の改正に関する記事は次のとおりです。
・「介護保険法等の一部を改正する法律案」はこちら(4/29)
・「介護保険法等の一部を改正する法律案」はこちら(5/6)
改正案の「自立支援介護に向けた保険者機能の強化」などの記事は次のとおり(①~④)
① 財政的インセンティブの導入について
・「財政的インセンティブの導入」はこちら(6/13)
・「財政的インセンティブの導入~和光市の事例」はこちら(6/15)
・「財政的インセンティブのロールモデルとなった和光市の自立支援」はこちら(6/17)
・「高齢者の自立支援が理念となっている和光市」はこちら(6/20)
・「モデルとなった和光市の徹底した自立支援の意識付け」はこちら(6/22)
・「和光市の地域支援事業」はこちら(6/24)
・「和光市の市町村介護予防強化推進事業」はこちら(6/27)
② ケアマネジメントのあり方の見直しについて
・「2018年4月から居宅介護支援の指定権限を市町村に移管」はこちら(6/29)
・「地域包括支援センターの機能を強化」はこちら(7/1)
・「地域ケア会議におけるケアプラン点検の徹底」はこちら(7/4)
③ 市町村による事業所の指定拒否の仕組みの拡大について
・「市町村による事業所の指定拒否の仕組みの拡大」はこちら(7/6)
・「地域密着型サービスは総量規制の対象になります」はこちら(7/8)
④ 「共生型サービスの」の創設はこちら(7/11)(7/13)
⑤ 「有料老人ホームの入居者保護のための施策」はこちら(7/15)(7/18)
月・水・金は次のとおり税務の記事を
月曜日は「マイホームの税金の手引き」
水曜日は「会社設立後に必要な手続きと必要な書類」
金曜日は「いざそのときにあわてないための相続税や相続に関する知識」
火・木・土曜日は、介護事業についての記事のうち、しばらくは介護保険法の改正にかかわる記事を紹介しています。
介護事業にかかわる会計、税務、経営に関するご質問・ご相談については、窓口から電話やメールでお気軽にご照会ください。
おまちしています。