配偶者居住権などに対する小規模宅地等の特例の適用について(自宅を被相続人と配偶者が共有していた場合) ~ 贈与や相続・譲渡など資産税[23]
資産税の記事を紹介します。
今回は
自宅を被相続人と配偶者が共有していた場合の配偶者居住権などの評価と小規模宅地等の特例の適用について
を紹介します。
配偶者居住権とは(ざっくりと)
配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として,終身または一定期間,配偶者に建物の使用を認めることを内容とする法定の権利です。
遺産分割や被相続人の遺言により、配偶者に「配偶者居住権」を取得させることができます。
配偶者居住権に関係する評価区分は4つあります
配偶者居住権が設定された家屋と土地の評価区分は次のようなイメージになります。
A~Dはおのおの次のような区分になります。
A 建物の利用権 → 配偶者居住権の価額(緑色の部分)
B 建物の所有権
C 土地の利用権 → 配偶者居住権に基づく敷地利用権の価額
D 土地の所有権
AとCは配偶者の財産、BとDは所有者の財産として評価することになります。
適用要件を充足すれば小規模宅地等の特例の対象となります
CとDについて
配偶者居住権のうち、CとDは土地にまたは土地の上に存する権利に該当するものとして、その適用要件に満たすものであれば、小規模宅地等の特例の対象となります。
AとBについて
AとB部分は建物についての権利になりますので、適用対象になりません。
自宅を被相続人と配偶者で共有していた場合の配偶者居住権などの評価と、小規模宅地等特例適用の具体的計算例を示すと次のとおりです
たとえば
■被相続人甲は、2021年3月20日に相続の開始がありました。
■自宅(建物および敷地)の承継について
①甲の遺言により、乙は建物の被相続人甲の持分部分について配偶者居住権を遺贈により取得しました。
②建物および敷地の被相続人甲の持分部分についての所有権は、長男Aが相続しました。
③甲、乙と長男Aはともに自宅に住んでいました。
■相続税評価額
建物:2,000万円 土地5,000万円(800㎡)
■建物・敷地の所有割合
被相続人甲:5/10
配偶者乙 :5/10
■建物構造
木造(建物建築日:2010年12月1日)
■相続開始の日
2021年3月20日
■配偶者の年齢
80歳10月(相続開始の日)
配偶者居住権の価額は次のとおりです
①建物(被相続人甲の持分部分)の相続開始時における時価
2,000万円×5/10(持分割合)=1,000万円
②相続税評価額
1,000万円-1,000万円×(33年-10年-12年)/(33年-10年)×0.701
=6,647,392円(配偶者乙の取得財産)
耐用年数:33年(22年×1.5)
経過年数:10年(2010年12月1日~2021年3月20日:10年3ヶ月)
存続年数:12年(第22回生命表に基づく平均余命11.71年)
複利現価率:法定利率3%による12年の複利現価率は0.701
耐用年数は減価償却資産の耐用年数等に関する省令に定める住宅用の耐用年数を1.5倍したものを用います。
建物の価額(建物の所有権の価額)については次のとおりです
配偶者居住権の目的となっている部分の価額(被相続人甲の持分部分)
10,000,000円-6,647,392円=3,352,608円(長男Aの取得財産)
土地の利用権( 配偶者居住権に基づく敷地利用権の価額)の価額は次のとおりです
①土地(被相続人甲の持分対応)の相続開始時の時価を算出します
50,000千円×5/10=2,500万円
②配偶者居住権に基づく敷地利用権の価額
2,500万円-2,500万円×0.701=7,475千円
土地の所有権の価額(長男Aの取得財産)は次のとおりです
2,500万円-7,745万円=17,525千円
小規模宅地の特例の適用については次のとおりです
17,525千円(所有権) > 7,475千円(敷地利用権) 所有権の価額から優先的に適用
■小規模宅地等の適用面積は次のとおりです。
①所有権
800㎡×5/10×17,525千円/25,000千円=280.4㎡
②敷地利用権
800㎡×5/10×7,475千円/25,000千円=119.6㎡
■適用面積の配分は次のとおりです。
①17,525千円>7,475千円 ∴所有権有利
②所有権
280.4㎡ ≦ 330㎡ ∴280.4㎡
②敷地利用権
119.6㎡≧330㎡-280.4㎡=49.6㎡
■小規模宅地等の特例適用後の価額は次のとおりです。
①長男A
17,525千円-(17,525千円×330/400㎡×280.4/330㎡×80%)=7,696千円
②配偶者乙
7,475千円-(7,475千円×330/400㎡×49.6/330㎡×80%)=6,733千円
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