費用負担が重いときの高額介護サービス費(利用者負担が一定額を超えると払い戻しされます)について【介護保険制度の見直しに関する意見】~ 2040年問題㉘
2019年12月に開催された社会保障審議会・介護保険部会において、2040年を踏まえた2021年度の「介護保険制度改正」の考え方があきらかになっています。
介護保険制度見直しのポイントは次の5つです
Ⅰ 健康寿命の延伸(介護予防・地域づくりの推進)
Ⅱ 保険者機能の強化
Ⅲ 地域包括ケアシステムの推進
Ⅳ 認知症施策の総合的推進
Ⅴ 持続可能な制度の構築・介護現場の革新
1 介護人材の確保・介護現場の革新
2 給付と負担
Ⅵ その他の課題
このうち、今回は「給付と負担」の中で取りあげられている
「高額介護サービス費の負担上限額の引き上げについて」
を紹介します。
利用者負担が一定額を超えると払い戻しされます
介護保険制度においては、所得の段階に応じて利用者負担額に一定の上限を設けています。これを超えた場合には、超えた額が高額介護サービス費として利用者に償還されることとなっており、過大な負担とならない仕組みとなっています。
2015年までは3段階の設定でした
高額介護サービス費の所得段階および自己負担上限額は、次のようになっていました。
■生活保護受給者等: 15,000 円(個人)
■住民税非課税世帯の者:24,600円(世帯)
■上記以外の者(一般):37,200 円(世帯)
平成 29 年の制度改正により一般区分の自己負担上限額を見直し(4段階に)
37,200円(世帯)から医療保険の一般区分の多数回該当と同じ水準である44,400 円(世帯)に見直しがされています。
また、長期利用者に配慮し、一割負担のみの世帯については、年間の負担額が見直し前の年間の最大負担額を超えることのないよう 446,400円( 37,200 円 ×12 か 月)の年間上限が3年間の時限措置として設けられています。
高額介護サービス費の自己負担上限額は、医療保険の高額療養費制度を踏まえて設定されています
一方、医療保険の高額療養費制度はこれまで累次の改正が行われています。
つまり、70 歳以上の方について、平成30年8月からは、現役並み所得区分が細分化され、多数回該当の負担上限額が、年収により次のように区分されていいます。
■約383万 円 ~約 770 万円: 44,400 円
■約 770 万 円 ~約 1160 万円: 93,000円
■約 1,160 万円以上: 140,100 円
平成29年の制度改正で設けられた年間上限の該当件数は
平成30年9月から令和元年8月の支出決定分で累計約 5.2 万件となっており、高額介護サービス費全体の件数の約3%となっています。
高額医療・高額介護合算制度について(高額医療合算介護サービス費)
医療保険と介護保険における1年間の自己負担の合算額が高額となり限度額を超える場合に、被保険者に、その超えた金額を支給し自己負担を軽減する高額医療・高額介護合算制度があります。
これらを踏まえて高額介護サービス費のあり方は、次のような意見となっています
①高額介護サービス費は、自己負担上限額を医療保険の高額療養費制度における負担上限額に合わせ、年収 770万円以上の者と年収約 1,160 万円以上の者について、世帯の上限額を現行の44,400 円からそれぞれ93,000 円、140,100 円とする見直しを行うことについて、おおむね意見の一致 。
②平成29年の制度改正で設けられた年間上限については、利用の実績を踏まえ、当初の予定通り令和2年度までの措置とすることについて、 おおむね意見の一致 。
(出所:社会保障審議会・介護保険部会資料 19/12/27)
「2040年問題」とは
高齢世代の高齢化、団塊ジュニアの高齢化(65歳以上)という人口構造の変化により、日本の社会に新たな問題が生じることです.
変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する(ピーター F.ドラッカー)
Never waste a good crisis!
2040年問題
① 介護保険制度地域支援事業の「生活支援サービス」へのニーズの増加
② 介護サービスの利用者数は2040年度までに約1.5倍に増える見込です
③ 「ポスト2025年」2040年に向けて介護事業を考えるときの視点
④ 2040年に向けて介護事業を考えるときの視点「健康寿命の延伸」とは
⑤ 介護事業を考えるときの視点「医療・福祉サービスの改革」とは
⑥ 介護事業を考えるときの視点「健康寿命の延伸プラン」の内容とは
⑦ 生産性の向上を図るための「医療・福祉サービスの改革」の内容とは
⑧ 「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」マンパワーシミュレーション
⑨ 介護ロボット開発等加速化事業と税制優遇措置(税額控除と固定資産税の特例)
⑩ 介護ロボットの導入による業務負担軽減と経営力向上計画の作成
⑪ 「管理者要件」主任ケアマネジャー以外も継続可能です。経過措置を6年間延長
⑬ 2021年度「介護保険制度改正の全体像」(介護保険制度の見直し関する意見)
⑭ 「一般介護予防事業の推進」~介護保険制度の見直し関する意見
⑮ 総合事業の効果的な推進 ~ 介護保険制度の見直し関する意見(介護保険部会)
⑰ 保険者(市町村)機能の強化を図るためのPDCAプロセスの推進
⑱ 保険者(市町村)機能の強化【調整交付金】【データ利活用の推進】
㉑ これからの介護保険事業計画における「認知症施策の総合的な推進」
㉒ 「介護人材の確保と介護現場の革新」~介護保険制度の見直し関する意見
㉓ 被保険者範囲と受給者範囲の見直しの視点【介護保険制度の見直し関する意見】
㉔ 今後の補足給付の在り方についての検討【介護保険制度の見直し関する意見】
㉖ ケアマネジメント(居宅介護支援)の10割給付(自己負担はゼロ)の見直し
㉗ 軽度者(要介護1・2)への生活援助サービスに関する給付の在り方について
高齢化に伴う日本の社会的課題に対して、会計・税務専門職としての役割を果たしたいと考えております。
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火曜日は、介護事業に関する記事を紹介しています。
ブログ記事は
http://www.y-itax.com/category/kaigo/
介護職員等特定処遇改善加算(2019年10月実施)
③ 勤続10年以上の介護福祉士がいない「経験・技能のある介護職員」のルール
④ 勤続10年以上の介護福祉士がいない「経験・技能のある介護職員」のルール
⑦ 特定処遇改善加算と処遇改善加算を合計した上乗せ率、最上位20%
⑧ 改善計画書作成2つのポイント。「特定加算の見込額」と「賃金改善の見込額」
⑨ 改善計画書の作成ポイント「各々のグループの平均賃金改善額を算出」
⑩ 改善計画書の作成ポイント。3要件のうち「職場環境等要件」とは
⑬ 4月から“年5日の年次有給休暇取得の義務”をご存じですか
⑭ 2019年4月から「労働時間の状況の把握」が義務化されています
⑮ 「職場環境等要件」と介護プロフェッショナルキャリア段位制度
⑯ 特定加算(Ⅱ)の算定にあたっては介護福祉士の配置等要件は満たす必要はない
⑳ 事業所内で働く介護職員がすべて「経験・技能のある介護職員」である場合
㉑ 介護だけではなく、看護や障害福祉サービスの業務を兼業している職員がいる場合
2025年に向けた介護人材の確保~介護人材確保の具体的な方策
③ なぜ、介護職は働き続けるためのキャリアパスの構築ができないのか?
④ 介護職に必要なキャリアパスのキーワードは「多職種によるチームケアの推進」
⑨ 介護の在留資格。外国人の在留資格「特定技能」(介護)の創設
ブログは曜日により、次のようにテーマを決めて書いています。
・月曜日は「開業の基礎知識~創業者のクラウド会計」
・火曜日は「介護事業」
・水曜日は「消費税」
・木曜日~日曜日はテーマをきめていません。
免責
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