配偶者居住権の価額を求める計算式の考え方について ~ 贈与や相続・譲渡など資産税[14]
金曜日は資産税の記事を紹介します。
今回は
配偶者居住権の価額を求める計算式の考え方について
を紹介します。
配偶者居住権の意味や評価区分の考え方は、前回の記事を参考にしてください。
→ 「配偶者居住権の価額」配偶者居住権の評価の考え方[13]
配偶者居住権の価額を評価する算式は次のとおりです
この算式の意味を考えていきます。
算式の左側の「居住建物の相続税評価額」とは
配偶者居住権が設定されていないものとした場合の建物の価額です。
通常は固定資産税評価額相当額とされます。
上記の算式のうち、次のマイナスをしている部分の算式の金額とは
この部分は配偶者居住権の目的となっている建物の価額です。
建物の所有権の価額です。
つまり、建物の価額から配偶者居住権の目的となっている建物の価額(建物の所有権の価額)を差し引いて配偶者居住権の価額を算出しています。
では、次の部分の算式(分母・分子)では
分子は配偶者居住権の存続年数を超過する建物の残存耐用年数、分母は建物の残存耐用年数です。したがって、分数は配偶者居住権の設定時における建物所有者に帰属する割合を示しています。
算式のうち「残存年数により応じた法定利率による複利現価率」を乗じています
これは、配偶者居住権の終了時に所有者が利用できる価額(終了時の価値)を法定利率で割り戻し、現在価値に修正しています。
こうした理解のうえで、具体事例を再度掲載します。
たとえば、配偶者居住権の価額の具体的計算例を示すと次のとおりです。
■相続税評価額 建物:2,000万円
■建物建築日:2010年12月1日
■建物構造:木造
■建物所有者:被相続人(夫)
■遺産分割日:2021年3月20日
■配偶者の年齢:80歳10月(遺産分割日)
■建物相続人:長男
〔配偶者居住権の価額〕
2,000万円-2,000万円×(33年-10年-12年)/(33年-10年)×0.701=13,294,783円
耐用年数:33年(22年×1.5)
経過年数:10年(2010年12月1日~2021年3月20日:10年3ヶ月)
存続年数:12年(第22回生命表に基づく平均余命11.71年)
複利現価率:法定利率3%による12年の複利現価率は0.701
耐用年数は減価償却資産の耐用年数等に関する省令に定める住宅用の耐用年数を1.5倍したものを用います。
(出所:Tax Answer No.4666配偶者居住権等の評価)
変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する(ピーター F.ドラッカー)
Every day is a new day!
夏の1日を元気にお過ごしください。
【編集後記】
今日、7/31に大阪は梅雨明けだそうです。嬉しいですね。
ただ単に、季節が巡っているだけですが。
今年のような長い梅雨は、経験をしたことがなかったです。
外出時は、いつも傘を持って出ていました。
贈与や相続・譲渡など資産税
[1] 父親が息子に時価より低額で、土地を譲渡した場合の所得税・相続税の考え方
[2] 長男がすべての財産を相続するかわりに、次男に従来から所有していた長男の土地を引き渡した場合に譲渡所得が発生します
[3] 離婚により自宅を妻に残産分与しました。夫は譲渡所得の申告が必要になります
[4] 離婚により住宅ローン付きの自宅を、妻に財産分与しました。妻は住宅ローン控除をうけられますか?
[5] 離婚により住宅ローン付きのマンションを、夫が妻に残産分与しました。夫の税金はどうなりますか?
[6] 離婚により住宅ローン付きのマンションを、夫が妻に残産分与しました。妻の税金はどうなりますか?
[7] 配偶者居住権は、配偶者の死亡により権利が消滅することを利用する節税術としてのメリットより、デメリットの方が大きい
[8] それぞれ子どもがいる高齢者同士が再婚した場合の「配偶者居住権」の利用方法
[10]配偶者居住権の対象となる建物を、その後に配偶者が取得した場合
[11]事業を廃止し、店舗兼住宅を居住用のみとして建物を使用する場合の配偶者居住権の取扱い
[12]相続時における配偶者居住権の評価の特徴となるポイント
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