「会社が役員からお金を借りる」同族関係者間の金銭貸借の税務ルール ~ 知っておきたい法人節税策の基礎知識
会社と役員、法人税と所得税にまたがる「役員からのお金の借入れ」
を紹介します。
開業間もない会社であれば、まだまだ信用力がありませんので、銀行から自由に融資を受けることが困難です。そこで、会社が社長からお金を借りることがあります。
原則は、役員からのお金の借り入れは、税法上の適正な利息の設定します
税法では、会社と役員がお金の貸し借りをする場合の「適正な利率」を次のように定めていますので、その金利を設定する必要があります。
①社長などが貸し付けの資金を銀行などから借り入れている場合(いわゆる「ひも付き」)には、その借入利率となります。
②会社における借入金の平均調達金利など合理的と認められる借入利率
しかし、「役員からのお金の借入れ」は無利息という場合が多いでしょう
つまり、役員が会社に金銭を貸し付けた場合において、無利息または低金利により利息の計算をしたとしても、会社、役員ともに税金の問題は生じません。
■たとえば、役員側は
個人の場合は、法人と違い、経済合理性に基づいて取引するものではないと税法上は考えています。したがって、役員が会社にお金を貸し付けたとしても、利息を徴収すべきとはなりません。所得税では実際に利益を受けたときに、課税されることになります。無利息の場合は、利益を受けていませんので、課税の問題となりません。
また、低金利で貸し付けた場合においても、その低利により受け取った利息について申告すればよいことになります
■一方、会社側は
法人の場合は、個人とは違い、常に経済合理性に基づいて取引をすると、税法上は考えます。会社から見れば、低い金利で借りる方が、経済合理性があることになります。低い金利であればあるほど経済合理性に適っていることになります。
また、適正な金利に基づくものとして考えたとしても、会社側の損益計算では、その適正利息の差額部分は債務免除益として益金の額に算入されるとともに、支払利息として損金の額に算入されます。
適正利息の差額部分は次のように考えます。
支払利息(損金算入)×× / 債務免除益(益金算入)××
結果として、損金と益金が相殺されます。その結果、所得の金額は変わりません。課税は生じないことになります。
高い金利の場合は、次のように問題が発生します
■たとえば、役員側
適正な金利により受け取った利息である場合は、受取利息として役員の雑所得になります。役員は、給与所得と雑所得の両方の確定申告が必要になります。
同族会社の役員がその同族会社から支払を受ける貸付金の利息については、20万円以下でも確定申告は不要とはなりません。
また、適正な利息を超える利息を受け取っている場合は、その適正利息を超える部分は役員報酬(給与所得)となります。
■一方、会社側は
会社側では、適正な利息を超える部分が役員報酬となり、源泉徴収と過大報酬の判定の問題につながっていきますので注意します。
つまり、適正な利息部分は支払利息にカウントされますが、それを超える部分は法人税法上、役員報酬となります。そうすると、会社側にその役員報酬に対する源泉徴収の問題が発生します。
さらに、適正な利息部分を超える部分の利息と通常の役員報酬を合計したところで、その役員報酬が適正かどうかを判定することになります。
その合計額が役員報酬として不相当に高額であれば、不相当に高額な部分は損金に算入されません。
画像は、京都府舞鶴市鹿原金剛院で咲いていたオオデマリ(大手毬)です。ジャパニーズ・スノーボール(Japanese snowball)というそうです。
変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する(ピーター F.ドラッカー)
Every day is a new day!
向暑の1日を元気にお過ごしください。
創業者には、事業を着実に成長させるために、決算書の会計データを計器盤として利用することをおすすめしています。次のようなサービスを提供しております。
▶ 創業起業サポート 「創業者応援クラウド会計サービス」と「顧問相談クラウドサービス」
お伺いして、会計処理や税務の相談や提案などさせていただくサポートサービスを提供しております。
「知っておきたい法人節税策の基礎知識」の記事は次のとおりです。
・飲食費のうち、会議費・交際費・福利厚生費として認められるもの
・退職金が節税につながる三つのメリット。税制上大変優遇されています
・消費税、持ち帰り(テイクアウト)と店内飲食の税込価格を一律にする方法
・貸倒引当金~一定の要件をみたせば債権の50%を経費計上できます
・保険契約は出口を考える。解約時に保険金収入を退職金で打ち消す
・2年しばり(継続適用)の「消費税の選択届出書」には注意します
・消費税の課税売上割合が95%未満の場合は、納税額が増えます
・消費税「個別対応方式」がいいのか「一括比例配分方式」がいいのか?
・資格取得や免許取得などの研修費用や技能習得費は会社経費にします
・費用?減価償却?資産を買ったときは請求書の中身を確認します
・法人税と所得税の税率の比較から、オーナー企業の役員報酬額を考えます
・従業員の退職金を事業年度ごとに損金にする「中小企業退職金共済」
・これからの長期平準定期保険の取扱いおよび改正後で全額損金算入のもの
・最高解約返戻率50%超の保険は、保険料の一部を資産計上します
・法人が支払う第三分野保険の保険料の取扱いが変更されています
・法人契約の個人年金保険の取扱い。資産になるケースと損金になるケース
・自社のホームページの作成費用は、原則として「広告宣伝費」です
・経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)個人の地位を引き継ぐ
・棚卸資産の取得価額を見直します。取得のための少額付随費用は取得価額に含めなくてかまいません
・新型コロナの影響で不動産貸付業を行っている会社が賃貸料を減額した場合
・機械装置など取得価額の全額を償却することができる即時償却【中小企業経営強化税制】
同族会社とその役員間の税務ルール」を紹介しています。
http://www.y-itax.com/category/houjin/
あてはまる事例を参考にしてくださいね。
土地貸借の税務ルール
・「会社が、社長から土地を借りる」と税金の問題が発生します」はこちら(1/24)
・「会社が権利金を支払うケース」はこちら(1/31)
・「会社が相当の地代を支払うケース」はこちら(2/7)
・「権利金に代えて、相当の地代に満たない地代を支払うケース」はこちら(2/21)
・「無償返還に関する届出書を提出すると認定課税は行われません」はこちら(2/28)
土地売買の税務ルール
・「会社が社長から土地を買う。その時の時価をどう算定するか」はこちら(12/13)
・「会社が社長から土地を買う。社長と会社の税金はどうなりますか?」はこちら(12/20)
・「会社が、社長から低額で土地を買うと税金の問題が発生します」はこちら(12/27)
・「会社が、社長から高額で土地を買うと…」はこちら(1/3)
・「社長が、会社から低い価額で土地を買うと…」はこちら(1/10)
・「社長が、会社から時価より高い価額で土地を買うと…」とはこちら(1/17)
建物貸借の税務ルール
・「会社が社長から建物を借りる」はこちら(10/11)
・「会社が社長から建物を借りる、社長の税金」はこちら(10/18)
・「社長が会社から建物を借りる、家賃のルール」はこちら(10/25)
・「社長が会社から建物を借りる、低額家賃の場合」はこちら(11/1)
金銭貸借の税務ルール
・「会社が社長からお金を借りる」はこちら(11/8)
・「会社が社長からお金を借りる、高金利の場合」はこちら(11/15)
・「会社が社長からお金を借りる、無利息の場合」はこちら(11/22)
・「社長が会社からお金を借りる」はこちら(11/29)
・「社長が会社からお金を借りる、無利息の場合」はこちら(12/6)
ブログは曜日により、次のようにテーマを決めて書いています。
・月曜日は「開業の基礎知識~創業者のクラウド会計」
・火曜日は「介護事業」
・水曜日は「消費税」
・木曜日~日曜日は特にテーマを決めずに書いてます
免責
ブログ記事は、投稿時点での税法等に基づき記載しています。本記事に基づく情報により実務を行う場合には、専門家に相談の上行ってください。