売上が減少すると運転資金は不足します?~ 中小企業の「決算書」の読み方入門⑧
経営者にとって必要な“会計”を紹介しています。
経営者目線で考える中小企業の決算書の読み方を、経営者の方が会社の数字をざっくり理解して、融資や経営に活かせる会計の考え方を紹介していきます。
前回は
「売上が伸びると運転資金が不足します」を紹介しました。
今回は
「売上が減少すると運転資金が不足します」
決算書から運転資金を算出します。
まず、当期の年商を損益計算書から確認します
次の損益計算書の場合
①当期の年商 270百万円
②当期平均月商を算出します
270百万円÷12か月=約23百万円
貸借対照表から、A、B、Cを計算します
次の貸借対照表があった場合
A:売掛債権回転期間を算出します
売掛金・受取手形(25+26)百万円 ÷ 平均月商(23百万円)=約2.2月
→ 売掛債権回転期間は、(売掛金+受取手形)÷平均月商の算式です
B:棚卸回転期間を算出します
商品27百万円 ÷ 平均月商(23百万円)=約1.2月
→ 棚卸回転期間は、(商品+原材料+仕掛品)÷平均月商の算式です
C:買入債務回転期間と算出します
買掛金30百万円 ÷ 平均月商(23百万円)=約1.3月
キャッシュのタイムラグ(立替期間)を算出します
A+B-C=キャッシュのタイムラグ(立替期間)
事例では、約2.2月 + 約1,2月 – 約1.3月=2.1月
売上減少割合が20%とすると、本来必要となる運転資金は減少します
①売上減少前の運転資金 23百万円(月商)×2.1ケ月=48百万円
②売上減少後の運転資金 23百万円×80%×2.1ケ月=38百万円
③減少する運転資金の額 ②-①=▲10百万円
必要となる運転資金が減少していれば、資金繰りが改善されます
しかし、理屈どおりになりません。
さらに資金繰りが厳しいと感じるのは、売上が減少してキャッシュフッローが減少している中で、固定費(人件費や地代家賃など)の負担が変わらないことに原因があります。
《参照記事》固定費と変動費について
運転資金の不足する理由は、結局、売上が減少していることにあります。
やはり、売上をどう増加させるか?
そのためにどういう具体策や取り組みをもち、実行していくかがポイントになります。
変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する(ピーター F.ドラッカー)
Every day is a new day!
秋の1日を元気にお過ごしください。
【編集後記】
仕事の帰りに、雨上がりの京都御苑をぶらりと散歩してきました。美しかったです。
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「中小企業」決算書の読み方入門
4 資金繰り表から見る、設備資金として借り入れることができる妥当な金額とは
6 決算書を受け取ったら、貸借対照表の資産の中身をチェックします
経営者目線で考える中小企業の決算書の読み方・活かし方
3 売上高はどう読むか?3~5年程度の推移の中で判断しましょう。
4 売上総利益は率をチェックしましょう。大切なことが分かります。
5 会計では売上原価と在庫はセットで考えます。在庫は要注意。
9 本来の事業でどれだけ稼げているか?がわかるのが営業利益。
12 PLの中の5つの利益のうち、4つめの利益が税引前当期純利益
13 5つめの利益が当期純利益。会社が1年間で得た最終的な利益です。
14 貸借対照表の見方~お金の動かしやすいものから、上から順にならびます。
15 流動資産の3つの区分~資産でないものが含まれています。
19 販管費のうちの人件費。ポイントになるのは「役員報酬」です
21 貸付金のうち、中小企業で最も多いのは社長への役員貸付金
22 開業費などの繰延資産の考え方。繰延費用と考える方がわかりやすい。
23 売掛金の回収サイトのチェックポイント。介護事業の回転月数は約2.5月。
25 在庫の過大計上は資産が増えるわけですから「利益」が増えます。
26 高額な仮払金・立替金などは決算書に計上してはいけません
27 債務の計上はもれてしまいます。計上もれを防ぐための方法
32 創業者の9割は決算書を見ていない。はじめての決算書6つのチェックポイント
37 月次試算表のチェック方法① 現預金の残高からチェックします
38 月次試算表のチェック方法② 次に利益剰余金と売掛金
39 月次試算表のチェック方法③ 棚卸資産と貸付金
40 月次試算表のチェック方法④ 負債科目の買掛金と未払金
41 月次試算表のチェック方法⑤ キャッシュフローをつかむ
42 月次試算表のチェック方法⑥ 損益計算書のチェックポイント
43 月次試算表のチェック方法⑥ 損益計算書「売上」のチェックポイント
44 借入金の返済額のうち元金は、損益計算書に計上されません!
48 事業の変化を見るには、数字を見る以外にありません。年計表を活用します
53 粗利率とは何ですか?
銀行はいかに企業を評価するか?評価を上げて資金調達を有利にする方法
③ 金融機関が取引先の将来性を判断する際のポイント「技術力」
⑤ 金融機関が取引先を判断する際のポイント「代表者個人の信用力」
⑧ 今後の再建可能性を銀行が判断する際のポイント「本業の収益力」
⑩ 信用保証協会の保証により融資保全されている場合は条件変更が行いやすい
⑫ 経営改善計画の策定とその具体的な実行があれば、不良債権にはなりません
⑬ 大幅な赤字や債務超過でも、キャッシュフローの状況で判断します
⑯ 債務超過でも商品実績や新規販売経路の開拓に見込がある中小企業は評価されます
⑰ 経営改善計画を策定していない場合でも、経営改善に向けた取り組みが評価されます
⑱ 外部要因にともなう一時的な影響による計画未達に対する評価とは
⑳ 貸出条件の変更を行っても不良債権にならない場合となる場合
㉑ 担保・保証で保全されている場合には、不良債権にはなりません
土曜日は「会計」を紹介しています。
ブログ記事はhttp://www.y-itax.com/category/keiri/
会計超理解ハンドブック(No1~No17)
② 財務三表とは?
⑨ 減価償却費って何ですか?
⑪ 決算書はどう読むか?貸借対照表のチェックポイントは純資産です。
⑬ C/F計算書のチェックポイントは「営業キャッシュフロー」です。
ブログは曜日により、次のようにテーマを決めて書いています。
・月曜日は「開業の基礎知識~創業者のクラウド会計」
・火曜日は「平成31年度介護報酬改定の重要事項」
・水曜日は「消費税」
・木曜日は「法人節税策の基礎知識」
・金曜日は「相続税ついてわかりやすく!」
・土曜日は「経営者目線で考える中小企業の決算書の読み方・活かし方」
・日曜日はテーマを決めずに書いています
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