遺言書の内容と異なる遺産分割をした場合の相続税と贈与税 ~ これならわかる相続税㉖
金曜日は「相続税をわかりやすく!」です。
被相続人の遺言がある場合は、その遺言内容にしたがって遺産分割を行うのが原則です。
しかし
相続人と受遺者の全員の同意があれば、遺言書と異なる遺産の分割が可能です
たとえば、次のような事例で考えてみます。
父親が死亡し、相続税の申告が必要となりました。
■遺産は
土地建物3,000万円(相続税評価額)
預金3,000万円
■法定相続人は
3人(母親、長男、弟)
預金の全額を、長男に与える遺言書がありました。
しかし、話し合いで、土地建物は母親、定期預金の半分を長男と弟で取得することにします。この分割は認められますか?
認められます。考え方は次のとおりです。
①遺言で財産を無償で譲ることを「遺贈」といいます
→ 「長男に預金3,000万円の全額を与える」旨の遺言が「遺贈」になります
②受遺者は遺言者の死亡後、いつでも遺贈の「放棄」することができます
→ 「長男(受遺者)は遺言者(父親)の死亡後、遺贈(預金3,000万円)」を「放棄」することができます。
③「遺贈」の放棄は、遺言者の死亡時にさかのぼって効力が生じます
→ 預金3,000万円(特定遺贈)の放棄をするためには、特別の手続きを必要としません。共同相続人に対して意思表示をすることで効力が生じます。
④遺贈の目的物は、原則として、共同相続人に帰属します
→ 受遺者(長男)がいったん遺贈の放棄をして、相続人間で遺産分割協議が成立したと考えます。
⑤各人の相続税の課税価格は、相続人全員で行われた分割協議の内容によることとなります
⑥贈与税が課税されることはありません
受遺者である相続人から他の相続人に対して贈与があったものとして贈与税が課されることにはなりません。
<参考>
長男が遺贈の全部放棄(3,000万円)をした後、遺産分割協議により預金3,000万円を取得したものとみても、または遺贈のうち1,500万円について遺贈を放棄したものとみても相続税の課税は同じです
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相続税をわかりやすく!
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