長期間結婚している夫婦間で行った居住用不動産の贈与等を保護~相続税をわかりやすく⑰
金曜日は相続税をわかりやすく。
民法(相続法)が改正され
配偶者への自宅の贈与等が保護する制度が新設されています
ざっくりと、新設の制度とは
婚姻期間が20年以上である配偶者の一方が他方に対し,その居住の用に供する建物またはその敷地を遺贈または贈与した場合は,計算上、遺産の先渡し(特別受益)を受けたものとして取り扱わなくてよいこととなります。
しかし、このざっくりの説明では、なにをいっているのか?わからないですよね。
現行制度の問題点を理解していただく方がわかりやすいです。
現行制度では、被相続人が贈与等を行った思いが遺産分割に反映されない問題点がありました
具体的には
相続人: 配偶者と子2名(長男と長女)
遺 産: 居住用不動産(持分2分の1) 2,000万円(評価額)
その他の財産6,000万円
生前贈与:配偶者に居住用不動産(持分2分の1)2,000万円
配偶者の取り分を計算する時には、生前贈与分についても,相続財産とみなされるため
(言い換えれば、配偶者への生前贈与は遺産の先渡し受けたものと取り扱われます)
したがって配偶者の取り分を計算するときは、遺産の2分の1から生前贈与分を控除します。
(8,000万+2,000万)×1/2 – 2,000万円(生前贈与分) =3,000万円となります。
そのあと、取り分3,000万円に生前贈与分を加えます。
配偶者の最終的な取得額は、3,000万円+2,000万円=5,000万円となります。
結局、贈与があった場合とそうでなかった場合とで、最終的な取得額に差異がないこととなります。
<参考> 被祖続人が贈与を行った趣旨が遺産分割に反映されません
(出所:法務省資料)
これでは配偶者の生活保障ができません
■長年にわたる配偶者の貢献に対する感謝を思ってなされた、被相続人の遺贈や贈与が意味をもちません。
■高齢の配偶者には生活保障に不安が残ります。
この課題を解決するため「被相続人の意思の推定規定」を設けます
この規定を設けることにより,遺産の先渡しを受けたものと取り扱う必要がなくなり,配偶者は,より多くの財産を取得することができます。
贈与等の趣旨に沿った遺産の分割が可能となります。
(出所:法務省資料)
たとえば、さきほどの事例においては
生前贈与分について相続財産とみなす必要がなくなる結果、
配偶者の遺産分割における取得額は、
8,000万円×1/2=4,000万円となります
配偶者の最終的な取得額は
4,000万円+2,000万円=6,000万円となり、贈与がなかったとした場合に行う遺産分割より多くの財産を最終的に取得できることとなります。
相続税の計算では未分割財産の場合に影響があります
「被相続人の意思の推定規定」(持ち戻し免除の推定規定)に基づき相続税の計算をするのは、遺産が未分割の場合です。
分割時の申告には影響ありません。
相続対策は“事前の準備、事後の百策に勝る”です。
Every day is a new day!
秋の1日を元気にお過ごしください!
相続税をわかりやすく!
② 遺産の分割が決まらないときでも、相続税の申告期限が延びることはありません。
③ 亡くなった方が遺言を残していなかった場合は、遺産分割協議書を作成します。
⑩ 払いすぎた相続税を取り戻す手続き。「更正の請求」のポイント。
⑪ 子どもがいる人が再婚したとき、連れ子は遺産を受け取る権利はありません。
金曜日は「相続税をわかりやすく!」を紹介しています。
争族を避けるための基礎知識、相続の権利でよく出てくる問題、節税の三原則などをお伝えしています。
「相続税をわかりやすく!」の記事は
http://www.y-itax.com/category/souzoku/
ブログは曜日により、次のようにテーマを決めて書いています。
・月曜日は「開業の基礎知識~創業者のクラウド会計」
・火曜日は「平成30年度介護報酬改定の重要事項」
・水曜日は「新事業承継税制」特例のポイント解説
・木曜日は「法人節税策の基礎知識【創業者向け】」
・金曜日は「相続税ついてわかりやすく!」
・土曜日は「経営者目線で考える中小企業の決算書の読み方・活かし方」
・日曜日は「贈与税についてわかりやすく!」
免責
ブログ記事の内容は、投稿時点での税法その他の法令に基づき記載しています。本記事に基づく情報により実務を行う場合には、専門家に相談の上行ってください。