「居住用賃貸建物」を取得した際の消費税が全額控除できなくなります。仕入税額控除の制限について ~ 消費税[59]
水曜日は消費税の記事を書いています。
今回は
居住用賃貸建物を取得した際の消費税が全額控除できなくなります。仕入税額控除の制限について
を紹介します。
今年度の消費税の改正で、「居住用賃貸建物」について、仕入税額控除制度を見直しされています。
改正の趣旨は次のとおりです
■住宅の家賃収入は非課税売上げです。住宅貸付けを行う建物取得に係る課税仕入れは、非課税資産の譲渡等にのみ要するものです。
したがって、仕入税額控除の適用を受けることができません。
■金地金売買を繰り返し行うことによって恣意的に課税売上割合を引き上げて,仕入税額控除の適用を受ける還付スキームが問題となっていました。その租税回避行為を防ぐためです。
令和2年10月1日以後に行う居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額には
仕入税額控除の規定は適用されません。
「居住用賃貸建物」とは
住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物で、高額特定資産※ などに該当するものをいいます。
また、建物の構造や設備の状況・その他の状況により住宅の貸付用でないことが客観的に明らかでない限りは「居住用賃貸建物」に該当します。仕入税額控除は認められません
※ 高額特定資産とは、棚卸資産及び調整対象固定資産のうち,その価額が1,000万円以上であるものをいいます。
具体的に「居住用賃貸建物」とは
たとえば、用途が賃貸用または販売用の建物で
■すべてが居住用の賃貸建物
■たとえば1階が店舗用でその他の階が居住用の賃貸建物など
居住用・店舗用の両方がある場合
居住用賃貸建物を、建物の構造や設備の状況・その他の状況により、店舗用部分と居住用賃貸部分とに合理的に区分しているときは、居住用賃貸部分についてのみ、仕入税額控除が制限されることになります。
住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな部分がある居住用賃貸建物については
合理的な基準により区分します。
つまり、建物の一部が店舗用の構造等となっている居住用賃貸建物などは、使用面積割合や使用面積に対する建設原価の割合など、その建物の実態に応じた合理的な基準により区分します。
居住用賃貸建物の仕入日の属する課税期間の翌々課税期間までの間において
事業用の貸付に転用または譲渡した場合には、仕入控除税額に加算調整するなど別途調整します。
今回の改正を含めて、消費税については、以前から自動販売機スキームも含めて特定の租税回避行為に対して、その取引について改正されています。
その都度、複雑化しています。
これに伴い税理士会は令和3年度の最重要建議で次のよう建議しています
「非課税取引のうち社会政策的配慮に基づく取引は課税取引とし、課税標準及び仕入税額控除の計算過程に取り込み、小規模事業者判定における売上高基準にも反映させ、計算をできるだけ平易にすべきです」
関連記事
・ 消費税の課税売上割合が95%未満の場合は、納税額が増えます
・ 消費税「個別対応方式」がいいのか「一括比例配分方式」がいいのか?
変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する(ピーター F.ドラッカー)
Every day is a new day!
秋の1日を元気にお過ごしください。
創業者には、事業を着実に成長させるために、決算書の会計データを計器盤として利用することをおすすめしています。次のようなサービスを提供しています。
▶ 創業起業サポート
お伺いして、会計処理や税務の相談や提案などさせていただくサポートサービスを提供しています。
ブログは曜日により、次のようにテーマを決めて書いています。
・月曜日は「開業の基礎知識~創業者のクラウド会計」
・火曜日は「介護事業」
・水曜日は「消費税」
・木曜日は「知っておきたい法人税の基礎知識」
・金曜日は「贈与や相続・譲渡など資産税」
・土曜日は「開業の基礎知識~創業者のクラウド会計」
・日曜日は、テーマを決めずに書いています。
免責
ブログ記事の内容は、投稿時点での税法その他の法令に基づき記載しています。本記事に基づく情報により実務を行う場合には、専門家に相談の上行ってください。
消費税[パート2]
[51] 「免税事業者の判定」特定期間の課税売上高について注意するポイント
[52] 前受金、仮受金として金銭を受け取ってもその時点で消費税はかかりません
[53] 飲食店主が業務用食材を使って食事をしました。消費税の課税対象になります
[54] 新車の販売業者が中古車を下取りした場合、下取り価額控除前の金額が課税対象になります
[55] 売上げに返品や値引きがあった場合の消費税の課税標準額の計算
[56] 免税事業者から商品を仕入れた場合、消費税の納税義務者ではないので「課税仕入れ」に該当しない?
[57] 免税事業者が課税事業者となったときは、期首在庫に含まれる消費税に注意します
[58] 土地売却の際に不動産業者に支払った仲介手数料は仕入税額控除ができますか?
消費税[パート1]
① 持ち帰りと店内飲食を、税込みで同じ価格にする方法があります
② 国内で行う商品の発送、内国法人は輸出免税の適用を受けることができません
④ 消費税アップ後、消費税負担が下がり増税後の方が得になります
⑤ どう選択するか?「軽減税率対策補助金」と「キャッシュレス・消費者還元事業」
⑥ 軽減税率導入に伴う、飲食料品を取扱う「卸売業者」や「小売業者」のキホン
⑦ 税抜き/税込み、どちらの表示が正しいの?わかりづらい外税表示と総額表示
⑨ 来年の確定申告時には消費税率8%から10%の差額に対応する消費税額が増加します
⑩ 国外事業者に支払うインターネット宿泊予約サイトへの掲載手数料の取扱い
⑪ 「消費税の軽減税率」で飲食店の価格表示はどうなるのか?どうするのか?
⑫ テイクアウトできる飲食店の価格表示?税込価格を異なるようにする場合
⑬ 有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などの食事の提供は課税です
⑭ 有料老人ホームなどで提供される食事が軽減税率(8%)となる場合のルール
⑮ 有料老人ホームなどで提供される食事が、軽減税率(8%)とされる理由
⑯ 有料老人ホームなどで提供される食事が、軽減税率(8%)となるための金額ルール
⑰ 老人ホームの食事に厨房管理費と食材費がある場合の軽減税率の考え方
⑱ 「簡易課税」とは。簡易課税の選択を検討することをおすすめします
⑲ 「原則課税」または「簡易課税」の選択。その有利・不利の判定の仕方
㉑ お店が8%と10%の商品を購入した際、税込経理でも区分経理が必要です
㉕ ポイント即時充当によるキャッシュレスの消費税仕入税額控除の考え方
㉖ 税率ごとに区分経理した帳簿から「課税取引金額計算表」を作成します
㉗ 区分経理が間に合わない個人事業者のための「消費税簡易課税制度選択届出書」特例
㉘ 還元事業の「ポイント付与」「口座充当」「引落相殺」「即時充当」の会計処理
㉙ 消費税の課税事業者とは?申告に必要な手続き。「消費税課税事業者届出書」の提出
㉛ 課税事業者になる方が有利な場合に提出します「消費税課税事業者選択届出書」
㉜ 「消費税簡易課税制度選択届出書」と「特例消費税簡易課税制度選択届出書」
㉟ 簡易課税制度適用事業者が免税事業者となった後、ふたたび課税事業者となった場合
㊱ 消費税の課税事業者選択について、提出した日から適用できるケース
㊳ 賃貸オフィスの「権利金」「更新料」「保証金」「敷金」の消費税の取扱いについて
㊴ 賃貸マンションを売却した際に、買主から受け取る固定資産税の消費税の取扱い
㊵ ビール券や商品券の消費税(課税・非課税・不課税)の取扱いの考え方
㊶ 認可外保育所の利用料について、消費税が非課税になるケースがあります
㊷ 基準期間の課税売上高1,000万円を超える事業主は、消費税の納税義務があります。その場合、今年の課税売上高がいくらかは関係ありません。
㊸ 課税期間開始後であっても課税事業者を選択することができます「新型コロナ特例」
㊹ 課税期間開始後であっても課税事業者の選択をやめることができます「新型コロナ特例」
㊺ 課税期間開始後であっても簡易課税制度を選択(または選択をやめる)ことができます~新型コロナなど災害により被害を受けた場合の特例
㊻ 新設法人などが調整対象固定資産を取得した場合、納税義務が免除になります~新型コロナ特例
㊼ 高額特定資産を取得した場合、特例対象者は納税義務が免除になります
㊽ 廃業後、個人事業者が新たな事業を開始した場合の納税義務の考え方
㊾ 相続で事業を引き継いだ場合の個人事業者の消費税納税義務について
㊿ 税基準期間の課税売上高。免点の1,000万円と比較する課税売上高に含めるもので注意するポイント