新公益信託制度に伴い公益信託の受託者には「みなし譲渡課税」を行うこととされました ~ 公益信託[14]
公益信託の記事を掲載します。
「贈与等の場合の譲渡所得等の特例」の改正について
を紹介します。
「公益信託に関する法律」は2026年4月から施行されますので、その施行の日から適用されます。
改正後、贈与等の場合の譲渡所得等の特例について
対象となる資産の移転の事由に「公益信託の受託者である個人に対する贈与又は遺贈(その信託財産とするためのものに限ります。)」が追加されています。
譲渡所得の起因となる資産等について
公益信託の受託者に対する贈与又は遺贈があった場合には、受託者の主体の属性(個人・法人)にかかわらず、その贈与又は遺贈によるみなし譲渡課税を行うこととされました。
改正前は(旧公益信託への財産の拠出に関する課税関係について)
現行の信託税制が整備される前の従来の取り扱いが維持され、事実上、私法上の法律関係を前提とせず、委託者が実質的に財産を保有するものとして取り扱われていました。
この改正の趣旨は
新たな公益信託制度の公益信託は、私法上の法律関係に従い、公益信託に財産を拠出した段階で受託者への財産の移転があったことを前提とした課税関係にすることです。
つまり、公益信託に財産を拠出する段階で
その拠出者の保有期間中に生じたキャピタルゲインの生産のための課税を行う必要があります。
これらの点を踏まえて、居住者の有するみなし譲渡課税の対象となる資産をその信託財産とするために公益信託の受託者に移転した場合には、居住者に対しその資産についてみなし譲渡課税を行うこととするための改正が行われています。
<参考>
所得税法第59条
贈与等の場合の譲渡所得等の特例
次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。
一 贈与(法人に対するもの及び公益信託の受託者である個人に対するもの(その信託財産とするためのものに限る。)に限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの並びに公益信託の受託者である個人に対するもの(その信託財産とするためのものに限る。)及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)
二 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)」
ただし
あわせて、措置法第40条が改正されています。適用対象となる公益法人等の範囲に公益信託の受託者を追加する改正が行なわれています。
つまり、公益信託の財産の拠出が一定の要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けた場合にはみなし譲渡課税を行わないこととされています。
<参考>
→ 新しい公益信託に対する譲渡所得の非課税について~ 公益信託[12]
(出所:「改正税法のすべて令和6年版」 99~100頁)
[編集後記]
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