相続後に実家を譲渡した場合、「相続税の取得費加算の特例」を使えるかどうかを検討します。
金曜日は、相続税をわかりやすく紹介しています。
前回、相続した実家についてその売却時には三つの優遇制度がありますとご紹介しました。
そのうちのひとつは、譲渡所得を計算する場合の長期・短期の区分です。これは以前に紹介しています。こちらを参考にしてください。
今回は
「相続後に実家を譲渡した場合、相続税の取得費加算の特例を使えるどうかを検討します」
です。
特例のざっくりとした概要は次のとおりです
相続税納付等のため相続後に相続財産を売却・処分しなければならないという事情に配慮して、相続人などが一定期間内に相続税の課税対象となった資産を譲渡した場合には、その相続人などに課税された相続税のうち、その譲渡した資産に対応する部分の金額を譲渡所得の計算上取得費に加算するというものです。
少しわかりづらいと思いますので
まず、土地・建物を売却した時の計算から説明します
譲渡所得の金額は次の算式により計算します。
譲渡所得の金額=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)
相続または遺贈により取得した資産を譲渡した場合の「取得費」は、被相続人の取得価額と取得時期を引き継ぐこととされています。※
※ ただし、限定承認相続および包括遺贈のうち限定承認にかかるものを除きます。
例えば、平成29年に亡くなった被相続人が実家(土地)を平成12年に2,000万円で購入していれば、相続人がその取得費と取得時期を引き継ぎます。相続人の取得費は2,000万円であり、売却すれば長期譲渡所得になるということです。
この取得費に支払った相続税額を加算することができます。
相続または遺贈により財産を取得した者が、その財産を相続開始の日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年以内に譲渡した場合には、上記の算式による取得費の額に、その者の相続税額のうち一定の金額を加算する特例の適用を受けることができます。
取得費加算額=譲渡者の相続税額×譲渡資産の相続税評価額/譲渡者の相続税課税価格
※ 特例による取得費加算額は、譲渡収入金額から取得費と譲渡費用を控除した金額(譲渡益)が限度です。特例を適用した結果、譲渡所得がマイナスになることはありません。
売却に際して、相続人が支払った相続税を譲渡原価に含めるという納税者感情に配慮した特例制度です。(租税特別措置法第39条)
そのため、特例を受けるための要件や手続きが決まっています。
次回、この制度をくわしく紹介します。
相続税に関することで気になることがあれば、電話やメールでお気軽にご相談ください。
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みなさん。今日も春の1日を元気にお過ごしください。
金曜日は「相続税をわかりやすく!」を紹介しています。
相続した実家が「空き家」だった場合
・①「不動産売却時には三つの優遇制度があります」はこちら(3/23)
相続税の三原則は次のとおり
・「相続税の節税の三原則~生前贈与と制度をフルに活用します」はこちら(12/8)
・「三原則のひとつ~不動産を活用する。お金をモノに換えておく」はこちら(12/15)
・「お金をモノに換えておく。小規模宅地等の減額特例」はこちら(12/22)
・「小規模宅地等の減額特例~土地を誰が相続するかにより評価額が変わります」はこちら(12/29)
・「小規模宅地等の減額特例~二世帯住宅は登記で特例適用が使えるどうかが分かれます」はこちら(1/5)
・「空き地を活用してアパートを建てるスキームとは」はこちら(1/12)
・「減額特例は老人ホームに入居した場合には適用がありますか?」はこちら(1/19)
・「制度を活用する!~生命保険のメリット」はこちら(1/26)
・「制度を活用する!~高齢で無保険であれば一時払い終身保険がおすすめです」はこちら(2/2)
・「生命保険金を活用する~保険料を支払っていた人は誰ですかに注意」はこちら(2/9)
・「養子縁組の活用~両刃の剣です」はこちら(2/16)
・「債務(マイナスの財産)も財産です。債務は相続財産から差し引きます」はこちら(2/23)
・「戒名料などの葬式費用の取扱い」はこちら(3/2)
・「考える優先順位は、もめごと回避が節税より優先します」はこちら(3/9)
・「次は二次相続のことも考えておきましょう」はこちら(3/16)
「相続の権利」でよく問題となるケースは、次のとおり。
・「子どもがいる女性が再婚した場合の相続を考えます」はこちら(9/15)
・「子どもがいない夫婦の相続はどうなりますか?」はこちら(9/22)
・「離婚して慰謝料としてマイホームを夫から受け取りました。税金は?」はこちら(9/29)
・「面倒を見てくれていた同居の息子の嫁がいても、相続権はありません」はこちら(10/6)
・「おひとりさまの相続?」はこちら(10/13)
“争族”を避けるための事前の基礎知識は、次のとおり。
・「遺産を相続人で分ける場合、平等は難しい」はこちら(10/20)
・「介護や世話の評価は、もめる原因に一番なりやすい」はこちら(10/27)
・「特別受益の持ち戻しは公平な相続を行うための気が利いた制度ですが」はこちら(11/3)
・「残す側の思いをしっかりと伝える遺言書」はこちら(11/10)
・「自筆証書遺言・公正証書遺言と成年後見制度の活用」はこちら(11/17)
・「遺言書に関係なく全員の合意があれば相続することができます!」はこちら(11/24)
・「遺産分割の話し合いがまとまらないと相続税に不利益が出てきます」はこちら(12/1)
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