遺産を分ける中で難しい「介護や世話の評価」。もめる原因に一番なりやすい。
金曜日は、贈与税や相続税について紹介しています。相続人の問題に続いて、遺産の分け方を相続税の視点から検討します。今回は「寄与分」を考えます。
「寄与分(きよぶん)」というものが認められています.
故人の事業の手伝いや、故人の財産の維持もしくは増加に特別に貢献した相続人には、遺産分割による相続分に加えて、別の取り分を受け取ることができる制度です。
この中で「特別に貢献」という評価が問題になります。
例えば、相続人の中の1人が、故人に対して介護や世話してきたので、その貢献分を寄与分として主張しても、他の相続人からすれば「自分だけ取り分が多いなんて許せない」と考えて、その結果、相続人間でもめるわけです。
下図のようなケースで、手厚い看護や介護をどう評価するか?
故人に遺言書がないケースで、法定相続人と法定相続分は
長女 …1/2
次女 …1/2
同居していた長女の長期間にわたる母親への手厚い看護や介護が、寄与分(「特別な貢献」に該当する)どうかが問題となります。
通常の療養看護・介護では寄与分は認められません。
「寄与分については誤解されやすいのは、被相続人の療養看護です。親を療養し看護することは、相当の負担を伴うことがありますが、親子は互いに扶養する義務がありますから、通常の看護は特別の寄与とはいえません。」
「寄与分は『通常の寄与』ではなく、『特別の寄与』があった場合にのみ認められます。ただ、両者の明確な区分基準はありませんから、結局は他の相続人との比較で決めざるを得ないでしょう。」
(「七訂版 民法・税法による遺産分割の手続と相続税実務」小池正明、税務研究会出版局)
ようするに、通常の寄与か特別の寄与かは、その判断は困難な場合が多く、遺産を分けるにあたって、もめる理由になるのでしょう。
寄与分の決定の方法は?
寄与分の決定は、共同相続人の協議によることが原則です。寄与分は遺産分割の前提となりますので、遺産分割協議の際に併せて決定することになります。しかし、共同祖続人間で遺産分割協議が不調に終わったときは、寄与相続人は家庭裁判所に寄与分の決定を求めることになります。
相続や相続税に関することは、一人一人の方で異なります。ましてや、一生に一度のことです。気になっていることは、信頼できる専門家に相談されることをおすすめします。
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