「ヘルスケアサービス事業(介護保険外事業)」成功に向けて、課題解決の考え方(志水武史氏)
日本総合研究所リサーチ・コンサルティング部門マネジャーである志水武史氏のお話をお伝えします。4回目です。
ヘルスケアサービス創出が難しいという課題に対する対策や解決の方向性を紹介します。
大阪健康寿命延伸産業創出プラットホーム(略称「OKJP」)の「新規ビジネスプラン創出研究会」に参加しました。そこで同氏が示された点で、私が重要だと考えたことを以下に述べます。
一つ目の課題「公的医療・介護保険サービスとの価格差があります(公的保険サービスであれば70%オフになります)」について
これは本質的な課題です。この課題に対しては「公的医療・介護保険の給付範囲の縮小または給付水準の引き下げ等の制度改正」が解決策となりますが、現実的ではありません。極端な縮小や引き下げは国民にとって公的医療・介護保険の後退ととらえられますので、理解は得られません。志水氏は課題解決に対する有効な対策はないと指摘しています。
しかし、財政赤字を踏まえた社会保険料のさらなる自己負担の増加や社会保障制度の変更は、将来的には充分考えられます。長期的な視点から、価格差は縮小に向かうと考えるべきだと思います。
二つ目の課題の「健康的な生活習慣の実施やヘルスケアサービス利用に向けた個人の行動変容の難しさがあります。健康無関心層をどう巻き込むか?」について
この課題に対しては、志水氏は解決の方向性を2点、紹介しています。
① IoT・健康情報(ビッグデータ)の活用により、個人の行動変容につながる可能性あります。
→ IoT・健康情報ビッグデータを適切に活用することにより、次のような変化を図ることが可能になります。
(ⅰ)潜在顧客層の掘り起こし(個人の行動変容促進)
(ⅱ)顧客にとってより効果的なサービス提供(サービス提供結果の検証によるサービスの見直し)
(ⅲ)事業者にとってより効率的なサービス提供(中山間地域等における遠隔サービス提供等)
→ 代表的な事例としては、FINC、MRT、リンケージ等のスマホアプリ、ウェアラブル端末等を活用した各種遠隔健康相談サービス、健康情報ビッグデータを活用した健康年齢少額短期保険株式会社の保険商品等があげられます。
②また、国が進める「健康経営」※の浸透により、企業事業主が従業員のためにサービス購入を図る機運が発生しています。
今後、働き方改革の進展に合わせて、健康経営を実践する中小企業を支援する取り組みが始まるように思います。具体的には、そのインセンティブとして健康経営に取り組む中小企業に対して、低金利融資や信用保証、人材紹介等の分野で、優遇するような制度の構築が検討されています。
※ 健康経営とは、「企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても大きな成果が期待できる」との基盤に立って、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践することです。 経済産業省では、健康経営促進に向け、「健康経営銘柄」や「健康経営優良企業認定制度」の選定・創設、「健康経営ガイドブック」の策定等を行っています。
ヘルスケア(介護保険外)事業は黎明期にあるといわれています。定まった市場規模も明らかになっていません。一つずつ、課題に対する解決する方向性を考えて、試行錯誤して成功に導くことが大切だと思います。
志水氏が紹介された課題は全部で6項目です。次回は残りの課題に対する解決方法の考え方を紹介しますね!
火・木・土曜日は、「介護事業の基礎知識バージョンアップ編」として、記事を紹介しています。
「介護事業の基礎知識バージョンアップ編」は、ケアビジネスに関心がある方やこれから介護事業の経営に取り組まれようと考えられている方を対象に、介護事業に関する基本的で重要な事項を紹介する内容にしていきます。
最近の火・木曜日の「介護事業の基礎知識バージョンアップ編」の記事は次のとおりです。
・「ヘルスケアサービス事業の創出が難しい理由(志水武史氏)」はこちら(10/12)
・「なぜヘルスケアサービス事業創出なのか?(志水武史氏)」はこちら(10/10)
土曜日は次のとおり「介護事業者のための会計ハンドブック」を連載しています。
・「介護会計では会計の区分のため、共通費用はルールに従って按分します」はこちら(10/14)
・「介護会計で大切なのは『会計の区分』です。処理ルールは4つあります。」はこちら(10/7)
最近よく読まれている記事
・「平成30年度の介護報酬改定まで、あと4か月およびそのスケジュール感」はこちら(8/17)
介護事業は社会課題解決事業です。
保険料と税で運営されている社会保険制度としての制度ビジネスです。3年ごとに改定される制度変更には、しっかりと対応することをおすすめします。
開業を準備されている方や準備を検討されている方は、是非、ご相談ください。
ご心配な点について一緒にベストな解決策を検討しましょう。
ご相談については、電話やメールでお気軽にご相談ください。(初回は無料です)
制度変更により、収入が落ち込んで事業縮小や廃業を余儀なくされるケースを避けるために、制度改定や計数を予測して事業経営に活用することが大切だと思います。
月・水・金は次のとおり税務の記事を紹介しています。
月曜日は「マイホームの税金の手引き」
水曜日は「同族会社とその役員との取引」
金曜日は「いざそのときにあわてないための相続税や贈与税に関する知識」
日曜日は「2018年3月申告用の所得税確定申告の手引き」